写真集「ブルー・ノート」と写真展「Kind of Blue +」(タクマクニヒロ)
写真集「ブルー・ノート」
写真集は、あまり売れるものではありません。
そんな中、この「ブルー・ノート」(タクマクニヒロ)は、口コミだけで3万部売れているという。
写真には、タクマさんが試行錯誤をしながらカメラマンになり、様々な媒体で活躍するようになるまでの経緯が書かれている。
フォトエッセイ集に近い。
このブルー・ノートの写真展が今行われていると知り、さっそく行ってきました。
【タクマクニヒロ写真展「Kind of Blue +」】
2017.6.20(火) – 25(日) Spiral Garden 11:00 – 20:00 入場無料
東京都港区南青山5−6−23(スパイラル1階
会社員からカメラマンへ
タクマさんは、大学時代からカメラマンになりたいと思っていました。
しかしいきなりカメラマンとして食べていくのは自信がない。
そこで、とりあえず会社に就職しました。
「写真は趣味でいいや」と思っていたそうです。
ある日夢を見ます。
医者に「あと半年の命です」と宣言される。
泣き崩れるタクマさん。「なぜカメラマンにならなかったんだろう」。
その時、天使が現れたました。
「もう一度人生をやり直せるならやり直してみたい?」。
過去の記憶は全て消えてしまうという条件でよければ、人生をやり直せるという。
次の日の朝、会社に辞表を出しました。
そしてカメラマンになるために上京。
写真の専門学校に入りましたが、授業料が払えなくて半年で中退。
カメラマンのアシスタントになったものの、基礎ができていないため毎日怒鳴られ、3ヶ月で頭髪が真っ白になってしまったそうです。
これもやめることになる。
さてどうするか。
無給でカメラマンのアシスタントを
そこで雑誌の女の子の写真コンテストに応募しようと考える。
原宿で片っ端から女の子に声をかけ、モデルになってもらい、応募。なんとグランプリをとってしまった。
さらにすごいのは、スタジオワークを学ぶため、まだアシスタントのいないカメラマン数人に「お金いらないから、撮影のアシスタントやらせて」と頼み、技術を覚えたことでした。
100万円がたまり、モデルクラブのモデルで撮影した写真で出版社に営業。
すべての出版社から撮影依頼が来たそうです。
CDジャケット、広告、カレンダー、雑誌と様々な媒体で仕事をするように。
そうやって有頂天になっていたら、仕事でトラブルが多くなり、1000万円近い借金を背負ってしまいました。
そして気づいたそうです。
「今まで起こったことは、全てを他人のせいにしてきたツケだ」。
真っ赤なポピー畑
そんなある時、撮影で行った公園で真っ赤なポピー畑に出会います。その色にタクマさんの中で戦慄が走りました。
そして全国の花を撮り歩きました。撮りためた写真で写真展を行い、3週間に7000人の人が来てくれたそうです。
ようやく仕事の意味が分かりました。「素敵な写真を見せてくれてありがとう」と言ってもらえること。写真を見た人に喜んでもらえること。それが仕事をすることの意味だと。
人生はカーナビ
写真集の巻末には、タクマさんがこれまでの人生で「いろんな事を経験して思ったこと」が書かれています。
・何かするときは、楽しいか楽しくないかで選んだ方がいい。
・ピンと感じた直感はとても大切。
・「いつかやろう」って思ってる限り永遠に何もできない。
・人生ってカーナビと同じ。自分の人生の目的地に向かってナビのスイッチを入れない限り、いつまでたっても到達できない。
でも、目的地にスイッチをいれたら、どんなに回り道をしても、自分があきらめない限り必ず目的地に到着する。
この写真展を見るため、福岡から上京してきた人もいるそうです。
撮られているのは身近な風景ばかり。
それなのにいつまでも見ていたい気持ちにかられる。
梅雨時の少し鬱々した時期に、ぜひ見たい写真展・写真集です。