旅なんかしなくていいと言い切れる贅沢*「ピノ」広島県尾道市
「あたかも幸せはどこか遠くの都市や保養地にあると思って、いつでも旅をしていないと落ち着かない人は、自分と目の前の悩みから逃げ回っているだけ」(セネカ=ローマの哲学者)
まるで自分のことを言われているみたいで、頭が痛いです。
今、旅ができずに鬱々している人がいるかもしれませんが、自分と身の回りの暮らしに心から満足していれば、あえて旅をする必要などないかも。
家があまりにも心地いいから、どこにもでかけたくない。今、一心に打ち込んでいる仕事や趣味があるから、遠くになど行きたくない、行っている暇がない‥。
そんな人は、あちこちうろうろしている私みたいな者より、ずっと幸せかもしれません。
広島県尾道のビストロ
昨年、広島県の尾道で、オープンしたてのビストロに入りました。とても美味しく、リーズナブルなフランス料理を出すお店でした。
実は目当ての店が予約客でいっぱいで、しかたなく近くにあったこの店に入ったのです。でもかえってよかったのです。
最初に出てきた菊芋のスープは甘くとろけるようで、前菜盛り合わせは丁寧に手作りしたハムと色とりどりのハーブが盛られていました。メインは鯛。これにも鮮やかな野菜(カラーニンジンなど)やハーブがふんだんに添えられている。三原の有機野菜の農家さんから取り寄せたものだそう。これで、1200円です。
カウンターの少しはなれた席には、男性が一人、白ワイン片手に黙々と食べていらっしゃいました。2杯、3杯おかわりしながら‥。(この料理、ワインと合いそうだな‥)彼を横目に、お酒を飲まない私は、ちょっぴりうらやましい。
ふたりと旅に出られる幸せと
料理を食べ終わるころ、30代くらいの店主がカウンター越しに話しかけてきました。
ご旅行ですか?私が今日岡山から来て、これから広島に行くというと、「いいですねー。僕も旅行に行きたいけど、まだ店をオープンしてまだ1ヶ月だから、とてもムリなんですよ‥」といいつつ、その顔が実にうれしそうなんです。
念願かなって店をオープンし、今たぶん仕事が軌道に乗りつつあるんだろうなあ。
(いいなあー)と私の方が心の中でつぶやく側でした。
ふらりと旅行できる自分が幸せのか?
旅行する暇がないほど、何かに熱中している彼の方が幸せなのか?
今いる場所が保養地
思うように旅ができないという人もいるかもしれません。でも「自分のいるこの場所こそが保養地」と言えるなら、そちらの方がずっとステキ(かも)。
これを機に、何か新しい趣味を始めてもいいかもしれません。
どこか遠くに旅するより、ずっと素晴らしいものをぜひこの機会に見つけてみてください。
そうそう、尾道の店はPINOという名前でした。
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