『アラヤシキの住人たち』*長野の山奥で自給自足の豊かな暮らし。
長野の山奥の古民家で自給自足生活を送る人たちを描いたドキュメンタリー映画『アラヤシキの住人たち』を見ました。
藁葺き屋根の家での共同生活
映画の舞台は長野・小谷村の山奥の集落。
車が入れず、山道を1時間半歩いていくような場所です。
大きな茅葺き造りの家があり、それが映画の舞台「真木共働学舎」。
20代から60代の男女10数人が共同生活しています。
学舎は、1970年代に教育者の宮嶋眞一郎氏さんによって設立されたました。
社会で弱い立場にある人たちと、農業などを基礎とした自立生活を目指す「競争社会ではなく、協力社会を」が理念。
ヤギ、ニワトリなどの動物もいっしょに暮らしています。
37年暮らしている人もいれば、3年で出て行く人もいる。
そんな住人たちの暮らしを1年にわたって撮り続けたのがこの映画です。
生き物とともに生きる
個人的にはヤギの出産に立ち会うシーンに興味をひかれました。
子ヤギは、生まれるとまもなく自力で立ち上がり、まだ目が開くか開かないうちに、お母さんのおっぱいをすい始めるのです。
誰に教わったわけでもないのに・・・。
母ヤギは子ヤギの体を一心になめ始める。
これが、エジプトで見た子ネコの出産シーンと全く同じだったことも驚きでした。
そのとき産まれたのは9匹。
みんな、まだ目が見えないのに、母ネコのおっぱいを吸い始めるのです。
母ネコは、赤ん坊を一匹一匹をペロペロ舐め続ける。
ネコとヤギでやることが一緒だなんて、生き物って不思議。
引き算の技法
見終わった直後の感想は、説明不足な映画だなあ、でした。
もっと見たかった、知りたかった、と思ったことがたくさんありました。
たとえば。パソコンは写っていたが、いじっているシーンは出てこなかったため、やっていないのか?
テレビはあるのか? ないとしたら、どうやって情報を得ているんだろう?
ヤギのミルクは飲むのか?
チーズは作ったりするのか?
若い人が何人か出てくるが、そういう人は何を求めてここに来るんだろう?
疑問に思ったことはたくさんあるものの、そういったドキュメンタリー映画にありがちな説明的なことはほとんどなくて、
ただただ美しい山奥の風景と、その中に抱かれるようにして暮らす住人たちの暮らしぶりが淡々と描き出される。
見終わってからも疑問は残ります。
寝るときは共同部屋なのか?
女性は女性同士、男性は男性同士で寝るのか?
どんなお風呂に入ってるんだろう?
物足りなく思う反面、ある意味、説明し尽くさないところが、この映画の美しいところかもしれないとも思いました。
できないことが人より多くある人、人と違った人でも、楽しく暮らしていける場があることの素晴らしさ。
おそらく監督が最も描きたかったことが、他の情報が少ないことで、見るものに訴えかけてくる。
ヤギの出産などの生命のサイクル、生きることそのもののイベントが生きてくる。
そもそも、生まれ、生活し、死ぬというシンプルなことこそ、人生の一大イベント。
それは人と少し違っていても、人間共通のできごとなんだ、という当たり前のことに気付きました。
本橋成一さん(この映画の監督)サイト
http://motohashi.polepoletimes.jp/#/
映画にこめたメッセージ
http://arayashiki-movie.jp/movie/message/
コメントを残す