バングラデシュの恋愛結婚事情と結婚式
バングラデシュの恋愛・結婚事情についてご紹介します。
バングラデシュの恋愛・結婚事情
バングラデシュの結婚は今も親などが決める見合いがかなりの割合を占めます。そんな中、今回ご紹介するのは恋愛結婚のケースです。女性Mさん(27歳・歯科医)とご主人Aさん(30歳・軍人)夫婦です。
2人のなれそめ
2人のなれそめは、Mさんが勤務する病院に、彼のお母さんが患者として訪れたことでした。
お母さんはMさんを気に入って、「うちの息子の嫁にしたい!」と息子さんを紹介します。すぐに2人は恋に落ち、やがて結婚を意識する仲に。
ところが、これにMさんのお父さんが大反対。Aさんが軍人だったからです。Mさん一族はすべて医者。お父さんはMさんを医者と結婚させたがっていました。「医者同士なら、相手の生活スタイルをよく理解できるから」が理由です。また軍人は転勤があります。だから娘が仕事を続けられないかもしれない。
お父さんは彼女の気持ちを変えさせようと、次々に良い縁談をもってきました。ロンドンで経済学の修士合を取得し、経済省で働いている役人などです。けれどもMさんは見向きもしない。腹を立てたお父さんは、1年間彼女と口をきかなかったそうです。
ようやくお父さんが折れたのは、Mさんのおじいさんの助言があったから。「Mが好きな人と結婚するのが、一番幸せになれるのではないか」バングラデシュは年長者を重んじる社会。年長者の言うことは尊重しなければなりません。お父さんはこの言葉に動かされ、Mさんの結婚を承諾しました。
結婚式の流れ
バングラデシュの結婚式は、基本的に4日間です。
<バングラデシュの結婚式の流れ>
①1日目:ガエ・ホルード(ターメリックの儀式)
②2日目:花婿のガエ・ホルード。花嫁と同じことをします。
③3日目 :花嫁側が用意する披露宴
④4日目:花婿側が用意する披露宴
最近では①と②、③と④をセットで行うことも多いようです。
①1日目:ガエ・ホルード(ターメリックの儀式)
身内だけで行われるお祝いです。場所はMさんの自宅でした。
ガエ・ホルードとは「ターメリックを肌に塗る」という意味です。ターメリックが花嫁の肌を柔らかくし、美しくすると信じられているからです。
ゲストが各自ターメリックのペーストを指につけ、それを花嫁の額に塗ります。
またミスティー(バングラデシュの甘いお菓子)を花嫁とゲストで食べさせ合います。
最後はビリヤニの食事。
このガエ・ホルードは、花嫁・花婿の家で別々に行われます。結婚式2日目は花婿宅でのガエ・ホルードです。
③3日目:花嫁の家族が用意する披露宴
これは日本の披露宴に相当します。場所はホテルやレストランや公民館、自宅などです。式が終わると花婿が花嫁を家へ連れていきます。
美容院で身づくろい
この日花嫁は朝9時に美容院に入りしました。まずは入念に化粧をします。
化粧が終わると、手に絵の具のようなもので入念に絵を描きます。この上に、さらに細かい赤や金の粉をふりかけます。
化粧がすむと、サリーに着替えます。花嫁の衣装は赤と決まっているそうです。
すべての支度が終わったのは正午近く。かかった費用は8000タカ(約1万円)でした。
披露宴会場は公民館
外で待っていた親戚の車で会場へ。場所は公民館でした。
ここで驚いたのは、来た人から次々に食事を食べ始めることです。開会のあいさつなどはなく、食べ終わった人はすぐに帰ります。服装も普段着といった感じの人が多い。
バングラデシュは親族のつながりが強いため、披露宴の招待客は多い場合は千人くらいになるそう。それだけの人数を会場に収容できなため、来た人から食べて退場するのです。この日は新婦側の招待客が600人、新郎側が100人。1週間後の新郎の披露宴では、新婦側が100人、新郎側が600人になるそうです。
新郎が到着したのは、式も後半になってから。だから多くの招待客は、新郎に会わずに帰ってしまう。実は1年ほど前に婚約パーティを行い、その時に新郎に会っているので、問題ないそうです。
食事する際は、まず皿(裏返しに置いてある)を上にし、コップの水を皿の上にかけながら右手を洗います。その水で皿をきれいにします。洗い終わったら、水をテーブル中央に置かれたボールに移し、皿にご飯を盛ります。
料理はチキンカレー、ビーフカレー、マトンカレーなど様々なカレー。米とカレーを手で混ぜ合わせながら食べます。
手で食べるのは、特に肉を食べる時に便利です。ナイフとフォークでは、骨つきの肉は食べずらいので。
新郎が登場
新郎が到着すると、センターの正門入り口で赤いテープがはられ、花婿を「とうせんぼう」します。
ここで親睦を深めるゲームが行われます。
花嫁の従兄弟たちが「俺たちが今日のために、綺麗に会場を飾り付けした。だからお金を払え」と言うと、
(新郎)「だったら、1万タカでいいかな?」
「それじゃ少ない。2万タカはもらわないと」
(新郎)「それは払えない。ちょっとまけて」
「それなら、この結婚は無しさ」
(新郎)「そんな無茶な。わかりましたよ、払います」
話し合いが終わると、用意されたマリーゴールドの花びらを新郎に振りかけ、めでたく新郎は会場の中に。
新郎新婦の食事
しばらくして、2人のための特別な食事が運ばれてきました。子ヤギの丸焼きです。
最後、他の招待客がおおむね帰り、近い親戚だけになったころ、新婦の両親と新郎新婦の誓いの儀式が行われました。
皆が中央で手を合わせて誓いあうもの。この時Mさんの目には涙があふれていました。
Mさん、Aさん、末長くお幸せに!!
★『イスラーム ヴェールの向こう』
20年間にわたり取材したイスラム女性たちのリアルな日常を紹介。モロッコ、チュニジア、エジプト、イラン、パキスタン、モルディブ‥‥。恋愛、結婚、歌と踊り、デート。「抑圧」などメディアによって作られたイメージと違う、生き生きした女性たちの実像を紹介します。
★「イスラム流幸せな生き方」
中学生でもわかるイスラム入門書。なぜ世界中でイスラム教徒が増え続けているか?がわかります。