『川をのぼって森の中へ』*ボルネオ島の先住民族に会いに行く
大学時代、休学して半年間インドネシアを放浪しました。知っている人もいない、言葉もわからない土地で旅をすれば、自分が変えられるかもしれないと思ったからです。それまで人見知りが激しく、勉強一筋でした。そんな自分を変えたいと思ったからです。
どこに行って、どこに泊まる。そんな予定はいっさいない旅。ジャワ島、スマトラ島、スラウェシ島、バリ島……主だった島を回り、最後にカリマンタン島(ボルネオ島)へ行った。
旅の最後に行ったボルネオ島
そこでマハカム川をさかのぼる旅に出ました。マハカム川は島内で最も流域面積の大きい川。森の奥深くに暮らす先住民族ダヤック族に会いたかったからです。島の男の子3~4人を付き添い人として出発。その男子たちとどうやって知り合ったのか、今ではすっかり記憶にありません。
結局、学生で、女性一人ということもあり、しかも根性と度胸がなく、目的は果たせませんでした。ダヤックの人たちに会うところまで行かず、ロングハウス(伝統的な住居)を見ただけで満足してしまったのです。
『川をのぼって森の中へ』
だから、今この本を見ると、たまらなくうらやましいのです。「川をのぼって森の中へ」。里山風景や昆虫を撮る写真家、今森光彦さんが子ども向けに書きおろしたボルネオ紀行。マハカム川を12日間船で旅し、上流に暮らすダヤック族の人に会う。
見開きは、アマゾンのような森を蛇行する写真から始まります。船が進むにつれ、ダヤックの昔ながらの模様をほどこした赤ちゃんの背負いかごをしょった人が船に乗り込んでくる。ちなみにダヤックとは「奥地」という意味。ダヤックそのものが部族名ではなく、細かく分けると80くらいの部族があるそうです。
ダヤックの人たちの中で、今も古くからの風習を続けているのは70歳以上の女性だけ。それも数人しか残っていないという。50年ほど前には森の奥に暮らしていたが、交通の便利さを求めて川の近くに住むようになったそう。その前は熱帯雨林のジャングルで何千年も暮らしてきた。今森さんは、その森の中に入っていく。
ダヤックの人が神様の鳥として崇める鳥がいたり、偶然オランウータンに出会ったり・・・。「人間は自然の中のごく一部の要素に過ぎない」この本を眺めていると、そんなふうに思います。いつかきっと、またボルネオ島を旅して、こんどは絶対ダヤックの人たちに会いたい。この地球上から姿を消す前に。
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