『クルド人のまち』*女一人で旅するクルド自治区が凛々しく美しい
「女一人でイスラム圏を旅して怖くないのか?」とよく聞かれます。答えは「ノー」です。一部の紛争地帯はのぞけば日本より安全なくらいです。
松浦範子さん(写真家)は、イラクやトルコ、イラン、シリアなどのクルド人居住地域をたびたび訪れ、「クルディスタンをたずねて」 「クルド人のまち」などの本を書いています。
クルド人とは?
クルド人は、トルコやイラン、イラクにまたがって暮らす人たちで、これらの国ができる前から、この地に暮らしてきた先住民族です。国に分断された結果、どの国でも少数派となってしまい、各国政府から差別的な待遇を受けてきました。不満を抱くクルド人は政府への反乱を起こすこともしばしば。そんな情勢不安定な場所を、松浦さんは女性一人で旅をし、本を書いています。
女だからこそ安心
松浦さんご本人は、色白のとても華奢な方。とてもクルド人地域の山岳地帯を歩き、家々を泊まり歩うようなタイプには見えません。
でも私はこう考えます。これがもし男性なら、クルド人居住区なんかをウロウロなんかしていたら、逆にあやしまれます。女性だからこそ、警戒心をいだかれることがないといえます。女一人ということで心配してもらえます。「女は守るべきもの」というイスラムの教えがあるからです。
イランの中でも最も人が温かい場所
「クルド人のまち」の舞台はイランです。クルド人が多く暮らす山岳地帯を旅しながら、彼らの文化、音楽、暮らし、政治的に置かれた状況などが語られています。
あらためてこの本を手にとったのは、先日の自宅に泊まったイラン人の若者が、「イランの中でいちばん人が良いのがクルド人の土地だ」と言っていたからです。
イランのクルド人は推定で500万人ほど。イラン人はとてもホスピタリティあふれる人たちですが、クルドの人たちは、また別格だとか。
「クルド人のまち」には、彼女がしばしば訪れるクルド人の町パーヴェーの友人について、こういうふうに書かれている。
「私がホテルのないパーヴェーを訪れるたびに泊まらせてもらっているのが、そのガリブの家である。いつもサナンタジあたりから電話をかけ、「明日行きます」とだけ言って、のこのこでかけて行く。だが一度だけ、知らせる間もなく、朝の六時にパーウェーのバスターミナルについてしまったことがあった。さすがいい時間を置いてから訪ねようと思っていると、バス出一緒だった人たちが私を気づかい、さっさとタクシーを捕まえ、運賃まで払ってくれてしまった。」
早朝にたずねてきた彼女の姿を見て、家の奥さんは彼女を抱き上げ、グルグルと回したそう。
こんなふうに、旅人とか見ず知らずの人を家に招き、食事をふるまい、「泊まっていけ」という・・・、これは、ここだけの話ではなく、イスラム圏一般によくあること。
この本はとにかく写真が美しい。ぜひ手にとって見てください
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