『職業としての小説家』*オリジナリティを出すには「楽しい」だけを残す
「自分らしく生きる」、「オリジナリティを出す」と言われて、他人と違うことをすれば良いと思いがちです。「旅」で言うなら、人と違う所へ行く、というように。しかし今は地球上のほとんどの場所に旅行者がいるし、どんな秘境にも観光客がいます。
「オリジナリティを出す」には、人と違うことをしなくてもいいのです。
オリジナリティのためには「削る」こと
オリジナリティを出すには削ることです。「職業としての小説家」(村上春樹著)に、こうあります。
「まず出発点として「自分に何かを加算していく」よりはむしろ、「自分から何かをマイナスしていう」という作業が必要とされるみたいです。僕らは生きていく過程であまりに多くのものごとを抱え込んでしまっているようです。情報過多というか、荷物が多すぎると言うか、与えられた細かい選択肢があまりに多すぎて、自己表現みたいなことをしようと試みるとき、それらのコンテンツがしばしばクラッシュを起こし(略)、とりあえず必要のないコンテンツをゴミ箱に放り込んで、情報系統をすっきりさせてしまえば、頭の中はもっと自由に行き来できるようになるはずです。
「常識にとらわれない100の講義」にも、同様のことが書いてあります。
「新しいものを作りたかったら、今あるものに何を加えようか、と考えていてはダメだ。そうではなく、今あるものの何を犠牲にするか、何をやらないでおくか、を考えておいたほうが良い。「しないこと」が新しさを求める勇気なのである。何しろ、今存在する多くの製品は、あまりにも多くのものを含みすぎて複雑になっている。だから、必要と思い込んでいるものを削るだけで、少し新しい物ができる、というだけのからくりだ。」
旅でいえば、どこに行かないか」「何を見ないか」ということでしょう。旅するとなると、だれでもガイドブックを見たりネットの情報をかき集め、「~に行かなきゃ」「~にも」・・・とプランを立てていると、いつの間にか旅が忙しくなってしまう。
いっそのこと、ガイドブックや情報を捨て、地図だけ持って旅をしてみる。それによっ自分だけのオリジナルな旅が近づくはず。
楽しいことだけを残す
「削る」時のポイントは自分が楽しいと思うかどうか?だそうです。
「それをしているとき、あなたは楽しい気持ちになれますか?というのがひとつの基準になるだろうと思います。(略)それをそうでなければ、楽しさを邪魔している余分な部品、不自然な要素を片端から放り出していかなくてはなりません。」(職業としての小説家)
マーケットめぐり巡りが好きなら、それだけを目的の旅にするとか。
新たに創りだすのは大変だが、今あるものを減らすのなら、それほど大変ではありません。それも自分が楽しいと思うものだけを残す。これなら私にもできそう。
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