2019-09-06

イスラム圏を旅行する際の注意とマナー

サウジアラビアの犬

サウジアラビアのペットマーケットに、愛犬を連れてきた男性。

イスラム圏に旅行に行くけど、何か気をつけることはあるでしょうか?絶対にしてはいけないことは?外国人でもモスクを見学できるのか?他に注意事項があれば知りたい。

そんな疑問に答えます。これまで20年以上イスラム圏を旅して、女ひとり、イスラム旅イランの家めし、いただきます!など旅の本を書いています。

イスラム圏の旅行で注意すること

①男女とも肌を見せない服装

イスラム圏の男性の服装

オマーンの男性は、皆ディスダーシャと呼ばれるワンピースの民族衣装を着ている。

男女とも最も注意しなければならないのは服装です。

イスラム教の国へ行くorイスラム教徒と接する場合、肌を見せない服装をするのが基本でありマナーです。

現地では公共の場所では男女とも肌は決して見せません。

そんな中で、肌を露出した格好は相手に不快感を与えます

男性は夏は半袖でも大丈夫ですが、半ズボンは(リゾートやビーチでないかぎり)NGです。

知人の男性がイランに駐在していた時、半ズボンで町を歩いていたところ、地元の男性に罵声を浴びせられたそうです。

そのくらい男性でも肌を見せるのは「はしたない」行為です。

アラブの男性は体全体を覆う長い丈の民族衣装を着ています。

中東は基本的に砂漠気候で、日中の日差しは強烈です。肌を隠す服装は直射日光から肌を守り、かえって涼しいのです。

②モスク見学の注意

イスラムの礼拝所であるモスクは、外国人も自由に見学できますし、写真も撮れます。(ただしモロッコでは異教徒は中に入れません)。

モスクに入る際には靴を脱いで入ります。また男女とも肌の露出は慎むことです。女性はスカーフを付けて入るのがルールです。スカーフは貸してくれる場合もありますが、念のため1枚持っていくと良いです。。

礼拝の時間は立ち入り禁止となることが多いです。またイスラムでは金曜日の昼の礼拝はとても大事なものとされ、男性が集団でモスクで礼拝します。その間は異教徒は入れません。

③礼拝時は店が閉まることも

イスラムでは1日5回の礼拝を義務付けています。夜明け・夜明けからお昼の間・お昼すぎ・日没時・夜です。礼拝の時間には、商店が閉まることもあります。

モルディブのローカル島(地元の人が暮らす島)に行った時、礼拝時に店が閉まってしまい、驚きました。「モルディブといえばリゾート」のイメージが強く、「イスラムの戒律はゆるい」と勝手に思っていたからです。かなり敬虔なイスラム教徒が多いです。

エジプトやモロッコ、チュニジアなどでは商店が閉まることは少ないですが、店の人がモスクに礼拝に行っているか店の中で礼拝中で買い物できないこともあります。

④金曜日は休日

イスラム教の国では、通常は金曜日が休日です。

この日は博物館などの観光地が閉まっていることもありますので、注意しましょう。

国によっては、金曜日はほとんど観光にならないこともあります。

サウジアラビアのリヤドに滞在したのは金曜日でした。博物館などほとんどの見所は閉まっていて、やることがなく途方にくれてしまいました。

また上記のとおり金曜日の正午は男性たちが近くのモスクに集まって礼拝をしますので、正午前後は店などが閉まっていたり店員がいなかったりします。

国によっては日曜日が休日ということもあります。

旅のプランを立てる時には、ぜひ祝日を把握しましょう。

⑤「無宗教だ」と言わない

イスラム圏の国へ行って現地の人と仲良くなると、たいてい「あなたの宗教は何ですか?」聞かれます。そこでつい「宗教はない」と言ってしまいがちですが、これは要注意です。

イスラム教徒に限らず信仰を持つ人にとって、宗教は生きる基本です。そして誰もが「人は信じる宗教を持つもの」という前提で生きています。「無宗教」で生きている人のことを想像できません。

また無宗教の人を「信用できない人」と思う人もいます。なぜなら(本当の)宗教とは、人間の生き方を教えるものだからです。人間らしく生きるにはどうしたらよいか?欠点を持つのが人間、本来人間は弱いものだから、お互い助け合って生きよう、お金がある人は、貧しい人を助けよう‥そんな「人としての生きる道」を教えるのが宗教です。ですから、「宗教がない人は信用できない」、そんなふうに思われてしまうのです。

ですから軽々しく無宗教だと言わない方が良いでしょう。

⑥ラマダン中の注意

ラマダンとはイスラム暦の9月の1ヶ月間、日中の飲食をひかえることです。(→:ラマダンとは?太る人続出の宴会続きのお祭り! )

多くのレストランは昼間、閉まります。ただ全く食事ができないわけではありません。一部ですが開いている店もあり、テイクアウトできる店もあります。スーパーには食材も売られています。

異教徒は日中飲食してかまわないのですが、人目につくような場所での飲食は避けましょう

レストランは日没後はほとんどがオープンしますが、多くの人が断食明けの食事をとるため、早めに食事がなくなってしまいます。出遅れないように気をつけましょう。

博物館や役所の多くは、ラマダン中は閉館時間が早まります。営業時間に注意が必要です。

ラマダン中は旅行をひかえた方が良いと言われることもありますが、ラマダン中でしかできない経験もあります。むしろ異文化を楽しむ気持ちで旅行しましょう。きっと思い出深い経験ができると思います。

⑦男女の接触をひかえる

イスラム圏では男女隔離が社会の原則です。男女の接触が限られていますから、たとえ外国人旅行者でも、公共の場所での男女の接触は控えた方が良いでしょう。

公衆の面前でのキスやハグなどは、ビーリリゾートなどではかまいませんが、それ以外の場所では遠慮した方が良いです。不快に思う人もいます。

男性が現地の女性に必要以上になれなれしくしたり、意味もなく接触するのは控えた方が良いです。ただ道を聞いたり、必要があって話しかけるのはかまいません。

未婚のカップルがホテルの同じ部屋に泊まれない場合もあります。エジプトやモロッコなどの観光立国ならほぼ問題ないようです。これも国によってはまちまちです。。

⑧女性の写真撮影時の注意

基本的にはあまり撮らない方がよいでしょう。撮りたければ許可を撮ってから。

ただ必ずしも撮影禁止というわけではなく、ケースバイケースです。

(→イスラム圏で女性の写真を撮る時のマナーとエチケット

⑨飲酒の注意

イスラムでは飲酒を禁じています。ただキリスト教徒もいるため、町中には酒屋もありますし、モロッコやエジプトにはバーなどもあります。

ただし飲酒は日本のように一般的ではありませんし、酔っ払いが町を歩いているなどは皆無。バーもある場所にはありますが、裏路地でこっそりと営業している感じです。

飲むなら節度を持って飲むことです。酒場にいる女性は基本的に商売の方ですので、外人女性が夜中に一人でバーへ行ったり、飲みすぎたりということは慎むべきです。

中東イスラム圏の旅行で持って行った方が良いもの

・サングラスや帽子‥日光対策

中東では日差しが強いため、サングラスや日焼け止めがあった方が良いです。

・防寒対策用の羽織る服

中東などは砂漠気候のため、朝晩の寒暖差が激しいです。

夏でも朝晩はひんやりすることがあります。砂漠に行くならなおさらです。

カーディガンや薄手のダウンジャケットなど羽織れるものがあった方が良いでしょう。

また中東系の飛行機の中は冷房が強い傾向があり、防寒対策は必要ですです。

女性が旅する時の注意

まず肌を出さない服装が大前提です。モスクに入る際はスカーフが必要なので、1枚あった方がいいです。

またイスラム圏では女性が一人で旅行する習慣がほとんどないため、外国人女性の一人旅は目立ちます。中には良からぬことを企む男性もいるかもしれませんので注意。

また現地では女性が見知らぬ男性ににっこり笑いかける習慣はありません。日本では女性は愛想が良いことが美徳とされ、見知らぬ男性にもニコニコしたりもしますが、イスラム圏では、男性側にあらぬ誤解を招きます。

また現地男性とは、誘われてもその気がなければお茶したり出かけたりは控えるべき。イスラムでは婚姻関係にない男女の接触を禁じていて、結婚まで男女交際は基本的にできません。

当然フラストレーションを感じている男性もいるわけで、そこで宗教の縛りがない外国人女性に手を出してくる男性もいます。気安くお茶に応じたりすると、「自分に気がある」と思われかねません。

(→イスラム圏の女性一人旅で注意すべきこと

国別の注意

これまではイスラム圏の旅の基本でしが、国によって当然注意すべきことは変わってきます。以下、国別に簡単に簡単に注意事項を書いておきます。

イラン

イランでは女性もスカーフ着用が義務になっています。モスクや聖者廟など宗教施設に入る際は、チャドルが必要です。これは入り口で貸してもらえることが多いです。

またあまり観光客が行かない場所や町は、警察に目を付けられる場合もあります。そのような場所へは、地元の友人などと行くのがベターです。

イランの観光・基本情報【徹底ガイド】

エジプト

治安は総じてとても良いのですが、混んだバスの中にはスリがいると聞いたことがあります。私は被害にあったことがありませんが。エジプト人は陽気で気さくな人たち。ぜひエジプト人との交流を楽しんでください。

→エジプト人はどんな人たち?

チュニジア

戒律がゆるいと思われていますが、敬虔なイスラム教徒もたくさんいます。肌の露出などはなるべくひかえるようにしてください。

【完全版】チュニジアの観光・基本情報 徹底ガイド

モロッコ

モロッコの人たちも非常に親切な方が多いのですが、観光地には残念ながらスリがいます。

私も実際に被害にあったことがあります。財布は外から取り出しにくい奥の方にしまいましょう。

モロッコはどんな国?観光や治安などの基本情報 

オマーン

公共の交通機関があまり発達していませんから、バスなどで移動する際には十分旅程に余裕を持って。

男女とも写真には抵抗ある人が多いため、撮る際は必ず許可を得てから撮るようにしましょう。

オマーンの魅力と観光の予備知識

UAE(オマーン以外)

タクシーもぼられたりすることもなく、日本と同じ感覚で旅行できます。ただ湾岸諸国はどこも肌の露出に厳しいため、リゾートなどをのぞいて半袖などは絶対に避けるべきです。

アブダビ・ドバイ女性の服装&旅にベストな服装を3分で解説

サウジアラビア

女性は体全体を覆うべきというのが国の決まりです。スカーフは義務ではありませんが、ほぼ全ての女性が髪を隠しています。ニカブで顔を隠している人も多いです。

観光客はニカブまでする必要はありませんが、スカーフは着用した方が良いでしょう。

サウジアラビア女性の服装や車の運転

イスラエル

イスラエルへ入国スタンプがあると、イスラム圏の国で入国を拒否される事があります。パスポートにスタンプを押されないよう別紙に押してもらうようにしてください。

さいごに

イスラム圏を旅する際に大切なのは、現地の習慣を尊重することです。

その気持ちさえ忘れなければ、安心して楽しく旅行できると思います。

注意点ばかり書きましたが、イスラム圏の人々は旅人にとてもやさしく、イスラム圏ほど旅行がしやすい場所はありません。

基本的にとても心の温かい人々だからです。

ご旅行の際の参考になれば嬉しいです。

★イスラム圏に旅する前に読みたい本★

●【イランの家めし、いただきます】
女ひとり20日間、イランの家庭を泊まり歩いた“出会い”と“食”の旅行記。イラン人のリアルな暮らしぶりを知ることができます。

●【女ひとり、イスラム旅
チュニジア、オマーン、モロッコなどイスラム圏の国々を女性一人で旅して、人々の家に呼ばれたりした旅のエッセイ。イスラムの人たちの温かさがかいま見れます

 

 

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