アムリトサル黄金寺院*シク教総本山
毎日10万食が無料で提供される寺院がインドにあります。パンジャブ州アムリトサルにある黄金寺院。シク教の総本山です。
シク教とは?
シク教は15世紀にグル・ナーナク(1469~1538)によっておこされた宗教で、ヒンズー教とイスラームの教えを融合した点に特徴があります。(グルとは師・賢い先生などの意味。)
ヒンズー教の輪廻の考えを受け継ぐ一方でカーストを否定し、イスラームの「唯一神の前では皆平等」という考えを合わせ持ちます。
シク教の「シク」はグルに対する「弟子」の意味で、唯一神に対して万民は弟子であるという姿勢をとります。
その教えは開祖ナーナクからゴービンド(1708年死去)まで10人のグルたちにより伝えられ、ゴービンドの死以降は、聖典「グル・グランド・サーヒブ」に引き継がれます。
どの寺院(グルドワーラー)にも必ず「グル・グランド・サーヒブ」があり、訪れた人々はまずその前にぬかづき、祈りを捧げます。
男性は一般的に髪と髭を切らず、頭に6~8mのターバンを巻きます。シク教の主流派の考えでは、体毛を切ったり剃ったりしてはいけないとされ、長くなった髪の毛をまとめるためにターバンを巻くとのこと。
ちなみに家にいるときや寝るときは1mくらいのターバンを巻いているそうです。(女性はターバンは巻きません。)
毎日10万食を無料で提供するランガル(無料食堂)
シク教の教え「誰もが皆平等」を体現するのが、「ランガル(無料食堂)」です。そこでは国や宗教に関係なく、誰もが無料で食事することができます。
ランガルはシク教の教えによります。開祖ナーナクは「一緒に食事することが、人々が分け隔てなく仲良くする一番良い方法」と考えました。そして第3代グルの時にランガルを設けられるようになったそうです。
ここ黄金寺院では毎日10万食が無料で提供される。しかも24時間!年間の延べ人数は3億人以上だそうです。
食事をいただくには入口でトレーを受け取り、順番に並びます。食後はトレーを回収の場所に持っていきます。
実際食事をしてみた感想は、なんとも言えない「心の安らぎ」です。正直、食事はそれほど「おいしい」とは感じませんでした。スパイスのパンチがきいたインド料理が好きな私には、少々物足りないひかえめな味付けです。
しかし大勢の人が一堂に会し、一列に並んで同じものを食べる。隣も前も全く知らない人同士で私は外国人ですが、不思議な一体感と安心感を感じました。
実際、アムリトサルではレストランでアムリトサルの郷土料理(ジャガイモが入ったチャパティ)を食べたいと思っていたのですが、なぜか自然と足はランガルへ。
1人でレストランで食事するより、ランガルで大勢と一緒に食事するほうが心温まるからです。(食事には寄付をするのがマナーです)
10万食の舞台裏
そしてこの10万食は、すべてボランティアの手によって用意されているというから驚きです。(この様子は映画「聖者たちの食卓」で放映されました)。
寺院には約300人のボランティアがいて、人々は協力・分担して料理を作り、食器を配り、片付けまでを行なっています。
ボランティアにはシク教以外の人もいます。1日何時間参加しても良いそうです。
寺院には外国人が400人無料で泊まれる施設があります(男女別)。
早朝に寺院を訪れたところ、寺院内の回廊で寝ている人がたくさんいました。ここで夜を明かす人も多いのでは?
寝る場所があり、食事も提供される。もし生活に困っている人がいたら、ここならば最低限寝る場所も食べるものにも困らない。これは貧困者には素晴らしいことではないかと思いました。
もちろんずっと居続けることはできないでしょうが、一時的にでもこういう場所があるのは救いかもしれません。
日本にもあればいいのにと、ふと思いました。
シク教の大切な教え/ イスラムとの違い
もう少しシク教について詳しく知りたいと、黄金寺院のインフォメーションを訪れました。対応してくれたのはサラブジー・シン氏です。
ー(私)シク教の方々のターバンの色は様々ですが、色に意味はあるのですか?
「すべての色は一緒です。ただゴールデンテンプルで働く人のターバンは4つの色と決まっています。深い紺色、黒、黄色、深い水色です」
ーシク教の最も大切な教えを教えてください
「この3つです。いつも神の名をひたすらつつしんで念じ、祈ること。自分の手を使って一生懸命働くこと。自分で稼いだらいくらかを人類のためにシェアすること。自分だけが豊かになってはいけないのです」。
ーイスラームとの違いは何ですか?
「どんな宗教も同じです。ただ教えには少しずつ違いがあります。たとえば食べてはいけないものなどです」。
ーランガルの食事はベジタリアンですが、シク教はベジタリアンですか?
「一般の信者にはベジタリアンではない人もたくさんいます。しかし洗礼を受けた人は基本的にベジタリアンです。なぜならグルがそう教えているからです。瞑想したときにベジタリアンなら神に近づくことが容易になります。私の家族は皆ベジタリアンです」
全ての宗教は同じ
サラブジー・シン氏が言う「どの宗教も同じ」。黄金寺院にいると、それを実感します。
訪れた人はまず必ず寺院に向かって手を合わせます。日本人が神社で神様に手を合わせるように。
そして地にひざまづき、ぬかづきます。イスラーム教徒が1日5回の礼拝でアッラーに対してぬかづくように。
寺院に入るには、靴を脱ぎ、髪の毛を隠します。これは多くの宗教にもあてはまることでしょう。
各宗教の祈りの所作は驚くほど似ている。
手を合わせる、神に対してぬかづくなどの行為は、宗教の決まり以前に、宗教心のある人にとってごくごく自然な行いなのかもしれません。
そして祈るという行為そのものも、大いなるものにすがりたい・敬意を示したいという、人の心の奥底にある思いに根差したものではないでしょうか。
アムリトサル旅行情報
以下はアムリトサルの旅行情報です。ご参考までに。
【アムリトサルのホテル】
Hotel Sarovar Regency (The Cottage)
黄金寺院から歩いて2〜3分の場所にあります。
【ATM】
Shera Wala Gateの近くにあります。ただし引き下ろしできるのは1回につき10,000rsまで。
【空港から&空港へのタクシー】
プリペイドタクシーで850rs。町から空港へは700rs。私の場合、ちょうどホテルの近くにタクシー会社があり、そこで予約しました。時間は、空港⇄市内は約20分。
追記:黄金寺院の入り口は6つあります。入口で靴を預けるので、自分が入った入口を忘れてしまうと外に出られなくなります。あるいは靴を入れる袋を持参するのもよいかもしれません。