六信五行*イスラムの教義の中心
イスラムの大切な義務をまとめたものが「六信五行」です。1日5回の礼拝、ラマダン月の断食なども「六信五行」に含まれます。
「六信五行」の意味
六信五行とはコーランやハディースから導かれたイスラムの最も大切な義務で、「6つの信じるべきこと」と「5つの行うべきこと」です。
「六信」‥ムスリムがその存在を信じるべき6つの事柄
(①神 ②天使 ③啓典 ④預言者 ⑤来世 ⑥天命)「五行」‥ムスリムが行うべき5つの行い
(①信仰告白 ②礼拝 ③喜捨 ④断食 ⑤巡礼)
「六信」の内容
①「神」
神アッラーを信じることが、イスラムの最も大切な信仰です。(イスラムの神アッラーとは「神」を意味するアラビア語)「神は唯一」これが最も大切な点です。
「汝らの神は唯一なる神。そのほかに神は絶対にない。」(2:158)
(*アッラーとは何か?)
②「天使」
天使はアッラーの命令を人間に忠実に実行させるために働く存在で、神と人間との連絡係です。
代表的な天使は、コーランを預言者ムハンマドにもたらした「天使ジブリール」です。
人間の毎日の行動をチェックする天使もいます。どの人にも右肩に善行を記録する天使が、左肩に悪行を記録する天使がいるとされます。
この記録された善行と悪行が、終末の日に神の前で審判にかけられ、善行の方が多ければ天国へ行けることになっています。
③「啓典」
啓典とは神の言葉を集めた書物のこと。神の言葉を「啓示」といいます。
啓典の代表は「コーラン」(クルアーン)で、他にイスラムでは、ユダヤ教の「旧約聖書」、キリスト教の「新約聖書」も啓典と認めています。ただしそれらはコーランとは別格の扱いです。
イスラムの考えでは、イスラム以前の人々は、神から授かった啓典を正しく理解せず歪曲してしまった。そのためコーランこそが「神が与えた最後で最高の言葉である」とします。(*;「コーランとは?日本人が知らない真実」)
④「預言者」
預言者は神の言葉(啓示)をあずかり、他の人々に伝える人のこと。(「予言者」ではありません)イスラムの預言者はムハンマドですが、他にユダヤ教のモーゼ、キリスト教のイエスも預言者と認めています。
コーランでは原初の人間アダムをはじめ25人の預言者が紹介されています。そのうち「5大預言者」と言われるのが、次の預言者たちです。
・ノア(ヌーフ):洪水と方舟で有名
・アブラハム(イブラヒーム):セム的宗教の祖
・モーセ(ムーサー):ユダヤ教の律法をもたらした
・イエス(イーサー):キリスト教をもたらした
・ムハンマド
この中で「最後で最も偉大な預言者」がムハンマドです。(*:預言者ムハンマドとは?)
⑤「来世」
来世は死後の世界のこと。イスラムにおいては「現世は仮の世界、来世こそ本当の人生」です。
来世には天国と地獄があり、最後の審判で生前の善行が多い人は天国へ、悪行が多い人は地獄へ行きます。来世は永遠です。
ムスリムの中には日頃あまり礼拝しない人やお酒をたしなむ方もいますが、天国の存在だけは堅く信じています。
(*:イスラムの来世:天国と地獄とは?)
⑥「定命」
天命とは「この世の物事すべては、神の意思によって定められている」ということ。
未来も神が決めることです。「インシャーアッラー」という言葉がありますが、これは「神が望むなら」という意味です。イスラム教徒が未来のことを語る時、必ず「インシャーアッラー」を付け加えます。
人間が未来を決めるなど、おこがましいと考えるからです。ただし人間の努力が無駄だという意味ではありません。「やることはやる、そのあとは神にまかせる」というスタンスです。
(参考:「天命」とは?)
「五行」の内容
「五行」は行動義務です。イスラムでは信じるだけでは不十分。行動が伴わなければ本当の信仰と言えません。それらの行動をまとめたのが「五行」です。
①「信仰告白」
信仰告白とは「アッラー以外に神はなく、ムハンマドは神の使徒なり」とアラビア語で宣言すること。
信者は礼拝のたびに信仰告白を唱えます。入信には、信仰告白を2人の男性の証人の前で唱えるのが条件です。
イスラム圏では、生まれたばかりの赤ん坊の耳元で、親がこの言葉を唱えます。
②「礼拝」
1日に5回、メッカの方向に向かって礼拝すること。夜明け、正午、午後、日没、夜の5回です。
礼拝を行うのは、必ずしもモスクである必要はなく、清潔な場所ならどこでも可能です。モスク以外での礼拝が、価値が下がるわけではありません。
礼拝中に唱える言葉(アラビア語)や動作は、世界中のムスリムで共通です。
(参考:イスラム教徒の礼拝。その時間は?方法は?場所に決まりはある?)
③「喜捨」
自分の財産の一部を貧しい人に分け与えること。財産とは、1年以上所有している現金、農作物や家畜などを指します。現金の場合、全体の2.5パーセントが喜捨の対象です。
受け取る人は、貧者や困窮者、ザカート管理者、戦士、旅行者などです。
「(集まった)喜捨の用途は、まず貧者に困窮者、それを徴収して廻る人、心を協調させた人、奴隷の見受け、負債で困っている人、それにアッラーの道(回教の伝播活動)、旅人」
(『コーラン』9:60)
義務の喜捨を「ザカート」、自発的な喜捨を「サダカ」と言います。
喜捨した人は善行をしたことになり、それだけ天国に近くことになります。
(参考:イスラムの喜捨ザカートとサダカとは何か?)
④「断食」
断食とはラマダン月(イスラム暦の9番目の月)の間、飲食を含むあらゆる欲望を断つことです。
(「ラマダン」は「断食」の意味ではなく、「イスラム暦9月」のことです。)
1ヶ月も断時期するなんて、つらすぎる!?これは日中だけです。さらに病人、妊娠中の人、旅人、戦闘中の戦士などは断食を免除されています。
(参考:イスラムのラマダンとは? )
⑤「巡礼」
一生に一度、最大の聖地メッカに巡礼すること。ただしこの義務があるのは、経済的・体力的に可能な人だけ。この点が、他の五行と違います。
巡礼には「義務の巡礼(ハッジ)」と「それ以外の巡礼(ウムラ)」があり、この「五行」の巡礼は、前者「ハッジ」のことです。(*:イスラムのメッカ巡礼ハッジとウムラとは?)
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