イスラム女性の服装ルール完全版【Q&A】

「イスラムの女性はなぜ黒い布で肌を隠しているのですか？」「服は黒だけ？他の色もある？」「顔まで隠しているのはなぜでしょうか？」「家の中でも同じ服装ですか？」‥イスラム女性の服装ルールを詳しくご紹介します。

イスラム女性の服装の名前

★ヒジャブ：女性の服装で最も一般的なもの。「ヴェール」「スカーフ」のこと。

★ブルカ：顔を含め全身を覆いかくすもの。目の部分だけ網状になっている。

★ニカブ：目だけ出して顔を隠すもの。

★アバヤ：顔と手足だけ出す黒いコート（長衣）。

★チャドル：大きな１枚布で全身を覆うもの。

色については、アバヤは総じて黒が多いですが、他はチャドルも含めて様々な色や柄があります。

（＊ヒジャブ、ブルカ、二カブ、チャドル‥‥イスラム女性の服装を解説　）

なぜ肌や髪を隠すのか？

イスラム女性の服装の基本は、①「顔と手以外の部位を隠すこと」②「体の線を見せないこと」の２つです。これはコーランに規定があります。コーランでは女性たちに「美しい部分を隠せ」（24:31）、「長衣ですっぽり体をおおうように」（33:59）と命じています。

これは男性を誘惑しないためです。イスラムでは「男性は女性の魅力に弱い」と考えるのです。そのため男性が女性の美しさに刺激されて良からぬことをしないよう、女性に隠せと命じたのです。そもそもは女性保護です。女性だけでなく男性にも服装規定があります（男性はおへそから下を隠すのが義務です）。

髪を隠すのは義務？

コーランには「美しい部分を隠せ」とあるだけで、具体的にどこを隠すかは書かれていません。髪を隠すべきか否かについては学者間で意見が分かれましたが、「隠すべき」が多数派の考えであり、そのために多くの女性は髪を隠します。

（＊：「女性は宝石」イスラム教徒の女性が髪や肌を隠す理由）

顔を隠すのは義務？

義務ではありません。アフガニスタンなどの女性がブルカで顔を隠すのは、その地域の慣習からくるもので、イスラムの教えとは無関係です。コーランでは「顔を隠せ」とは命じていません。

（＊：イスラムは女性に厳しい宗教？男性優位社会や地域の慣習との関係）

国や地域で服装はさまざま

上記①と②の基本さえ守れば、あとはどんな服装をするのも自由。よって女性たちの服装は国や地域によって様々です。

まず国ごとに大まかな違いがあります。湾岸諸国はアバヤ姿の女性が多く、中でもサウジアラビアはアバヤ＆ニカブの着用率が高い。イラン女性が着用するのはチャドルです。ブルカを身につけるのは、主にアフガニスタンやパキスタンの保守的な地域の女性です。他の国はヒジャブが主流ですが、アバヤやニカブ姿の女性もいます。

同じ国でも、地域や個人によって服装が違います。服装の違いは、主に個人の考え方からきています。各人の信仰心や家庭環境などによって、服装は変わります。同じ国でもジーパンに半袖姿の女性がいる一方、顔を隠している女性もいます。

顔を隠している女性が半袖の女性を批判するようなことはありません。イスラムの信仰は基本的に個人の問題であり、他人がとやかく言うことはマナー違反です。

（＊：世界のイスラム女性服装ファッション大全）

家の中でも同じ服装？

家の中や女性だけの場所では普通の服装です。髪も隠していません。女性が美しさを隠さなければならないのは、「自分の夫や親」以外の男性の前だけです。

ただ家にいて男性の来客があれば、急いでヒジャブやチャドルをかぶります。また家でも昼間は突然他人が入ってくることもあるので、着けたままのこともあります。

美しさは夫だけに見せるもので、外では地味な服装をしているぶん、家の中ではキワドイ格好をしています。そういう女性たちの需要を満たすべく、ファッショナブルなブティックやモールもたくさんあります。

（＊：イスラム女性が黒いアバヤの中に着ているものは？）

夏に肌を隠すのは暑くない？

正直暑いです。でも肌や髪を隠せば強烈な日差しから身を守ることができますし、逆にその方が涼しかったりします。私も現地ではヒジャブと長衣で肌を隠します。日焼け防止にもなり、髪の毛のネグセも隠せてなかなか重宝しますよ。

（＊：サウジアラビア女性の日常＊家の中でもアバヤ姿？

何歳からヒジャブを着用する？

特に決まりはありませんが、初潮がはじまるくらいの年齢が多いようです。エジプトやサウジアラビアなどアラブ諸国では、だいたい小学校6年生くらいから着け始めるようです。

（＊：エジプトの学校＊ジェンダー差はどこから生まれる？）

欧米の女性の服装をうらやましく思っている？

ヒジャブを着用するイスラム女性たちは、自由なファッションを楽しむ欧米女性たちを羨ましいと思っているのでしょうか？

逆に髪を出す方が恥ずかしいと思う女性もいます。ヒジャブの着用は、お洒落アイテムが１つ増えることでもあります。今はヒジャブ・ファッションを身につけたムスリマ（イスラム女性）が世界でも最もお洒落だと言われるくらいです。

ですからヒジャブをしていない欧米女性を全く羨ましいと思っていないし、他の自由を（一見）謳歌しているようなアメリカ女性などに対しても、羨ましく思う気持ちはないそうです。

（＊：『ムスリム女性に救援は必要か』＊「イスラム女性は抑圧されている」というイメージはいかに作られ、政治利用されたか？）

黒づくめでどうやって男女が出会うのか？

中東イスラム圏での結婚は、基本お見合いです。親戚の繋がりが強く、わりと簡単に相手が見つかります。

また結婚は宗教における義務ですので、年頃になると周囲の人がどんどん見合い話を持ってきます。

結婚式も男女の出会いの場としての定番。結婚式は基本男女別なので、若い女性を見初めるのは男性の母親です。

（＊：黒づくめでどうやって相手を見つけるの？ 【イスラム女性の婚活事情】）

 

【参考図書】

★「イスラム流幸せな生き方」
中学生でもわかるイスラム入門書。なぜ世界中でイスラム教徒が増え続けているか？がわかります。

★『イスラーム ヴェールの向こう』

イスラム女性たちのリアルな日常を紹介。モロッコ、チュニジア、エジプト、イラン、パキスタン、モルディブ‥‥。歌あり踊りありデートあり。「抑圧」などメディアによって作られたイメージと違う、生き生きした女性たちの実像を紹介します。