イスラムで禁止されていることは？【偶像崇拝・多神教・自殺・他殺・豚肉・酒ほか】
エジプト・カイロの酒店のショーウィンドー。イスラムでは飲酒は禁止だが、人口の5%ほどがキリスト教徒のため、酒店や酒類を提供する店もある。
イスラムで禁止されていることは？
イスラムでは主に次が禁止されています。
・偶像崇拝・多神教
・自殺・他殺
・姦通
・利子
・酒
・豚肉
・女性が人前で肌を見せること
最大の罪＝多神教・偶像崇拝
イスラムにおける最大の罪は多神教（偶像崇拝）です。コーランには「アッラーと他の神を並べて崇めてはならぬ」と繰り返し説かれています。
それ以外の禁止事項なら、アッラーはお赦しくださることもある。しかし多神教・偶像崇拝はそうはいきません。
「アッラーはほかのいかなるものとでも並べられたら絶対にお赦しにならない。そこまで行かない罪ならば、気のおむ気になった者には赦してもくださろう。」（４:51）
なぜ偶像崇拝が禁止？
イスラムでは偶像崇拝も多神教と同様、厳禁です。教会の中にはキリストやマリアの像がありますが、モスクの中にはアッラーの像などはありません。
あるのは「ミフラーブ」という「メッカの方向を示す壁のくぼみ」くらいです。
「されば偶像のたぐいを、それと知りつつアッラーとひとしなみ（同じ扱い）にあがめたりしてはならぬぞ。」（２：22）
なぜ偶像崇拝が禁止なのか？
偶像とは人間によって造られたものです。対してアッラーは人間がつくったものではない。だから偶像を崇拝することはアッラー以外のものを崇拝することです。たとえそれが「アッラーの像」だったとしても多神教に当たるということなのです。
自殺・他殺の禁止
イスラムでは自殺も禁止です。
「誰ひとり、定めの時が来て、アッラーのお許しを戴いてでなければ死ぬわけには行かぬ。」（３:145）
「信徒を故意に殺した者は、ジャハンナム（火獄）を罰として、そこに永久に住みつこうぞ。」（４:93）
イスラム社会では自殺は少ないと言われますが、その理由の１つはコーランで禁じているからです。
姦通の禁止
婚外の性交渉は日本では「不倫」とされ、やや軽く扱われていますが、イスラムではれっきとした罪です。
「姦通を犯した場合は男の方も女の方も各々百回の笞打ちを科す。」（24：2）
ただし誰かを姦通で訴えるには、正確には４人の証人を立てる必要があります。「姦通した」と他人を非難しながら、証人を４人用意できない場合、逆にその人が罪に問われます。（24：４）
利子の禁止
イスラムでは利子を取ることを禁じています。
「お前たち、他人の財産で得とろうとて利息つきで貸付けしても、そのようなものはアッラーのもとでは全然殖えはせぬ。」（30:39）
「富を得るにはちゃんと労働して稼ぐべき」と考えるからです。単にお金を貯えることで利益を得ることは、汗水たらして働くこととは違うという考えです。
イスラム圏には利子を禁じた「イスラム銀行」と、それ以外の普通の銀行の両方があります。
飲酒の禁止
酒をはじめ、人を酔わせるものは全て禁止です。
「信者たちよ、酒と賭屋と未来を予言することはサタンの誘惑である。成功を望むならこれらを遠ざけなさい。」（５:90~91）
ただし国によってはお酒も販売されています。イスラム教徒以外の人々もいるからです。
実はイスラムが興った当初、酒は禁止ではありませんでした。そのうちに酒を飲むとケンカが増えて憎しみ合うようになったり、神を忘れてお祈りしなくなったりするので、段階的に禁じるようになったそうです。
（＊：イスラム教で酒が禁止されている理由は？アルコール消毒は？）
豚肉の禁止
豚肉を食べることはイスラムでは禁止されています。
「アッラーが汝らに禁じ給うた食物といえば、死肉、血、豚の肉、それから（屠（ほふ）る時に）アッラー以外の名が唱えられたもの（異神に捧げられたもの）のみ。」（２：173）
豚肉だけでなく、豚由来の全てのものが禁止です。
ただ豚と知らずに食べてしまった場合には許されます。
女性が肌を見せることの禁止
オマーンの女性がつけるブルカ。オマーンの女性たちは普段これを身につけないが、男性が大勢集まる市場などでは、身につけるのが習慣となっている。
女性が人前で肌を見せるのは禁止です。（参考：イスラム教女性の服装ルール完全版【Q&A】）
一般的に見せてよいとされるのは、手と顔だけ。
「外部にでている部分はしかたがないが、そのほかの美しいところは人に見せぬよう。胸には覆いをかぶせるよう」（24:31）
この後に、見せて良い相手として自分の夫や親、兄弟などが挙げられています。
なぜ女性が人前で肌を見せるのを禁じたか？
男性を不必要に刺激しないためです。
イスラムでは人は欲望に負けやすく、弱い存在だと考えます。男性は女性の性的魅力に弱い。そのため男性の欲望を刺激しないよう、肌の露出をひかえ、身体のラインを隠すよう命じたのです。
それによって女性も性的被害を受けることが少なくなります。
（＊：ブルカ、ニカブ、チャドルとは？）
写真
写真は国によっては、人間の絵や写真、映画を「偶像」と考えて禁止しています。
しかし実際イスラム圏のほとんどの国で、国家元首や王族の写真があちこちに飾られています。
またイスラム圏では女性の写真は撮れないと言われますが、写真を撮られるのが好きな人も多いのが事実。
エジプトでもイランでも、カメラをかまえると、子供たちが寄ってきますし、女性もセルフィーが大好きです。
ただし撮影の前に「撮っていいですか？」と聞くのがマナーです。（参考：イスラム圏で女性の写真を撮る時のマナーとエチケット）
タバコ
タバコは明確な禁止規定はありません。ただしラマダン中は日中タバコを吸うことは禁止です。
（＊ラマダンとは？）
音楽
音楽については、コーランには明確に禁止する規定はありません。
ただハディースには預言者ムハンマドが「音楽が聞こえてきたときにムハンマドが両方の耳を指で塞いだ」とあり、禁止とまではいかなくても、推奨できないとされています。（「イスラムと音楽」）
しかし実際には音楽はイスラム社会の日常に溶け込んでいます。
結婚式には歌や踊りがつきものですし、エジプトの有名な女性歌手ウンム・クルスームは「永遠の歌姫」と言われ、今でもアルバムがアラブ世界で売れ続けています。
イスラム世界でも、日本や欧米と全く変わらず音楽が生まれ、人々に愛されているのです。
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