神アッラー＊99の美名（唯一・全知全能・全ての創造神‥）

「アッラーを信じる」。これがイスラムの信仰の中心です。ムスリムとして生きるとはアッラーを信じること。

その神アッラーとはどのような存在で、アッラーを信じるとは具体的にはどんなことでしょうか？

アッラーとは？

アッラーはアラビア語で「神」のこと。正確には「唯一絶対神」で、英語の「ザ・ゴッド（神）」にあたります。

つまりアッラーという名の神がいるわけではなく、「神」そのものがアッラーです。

イスラムでは神は唯一。他に神は存在しません。アラビア語圏のキリスト教徒たちも神を「アッラー」といいます。

もともとアラビア語の「イラーフ」（神）に、定冠詞「アル」がついたもので、「アル＝イッラーフ」→「アッラーフ」→「アッラー」となりました。

アッラーを信じるとは？

アッラーの存在を信じるだけでなく、その様々な特性や美点＝唯一の神、全知全能、全ての創造主、慈悲深い‥を信じることです。

アッラーには99の美名（特性・美点・能力）があるとされ、それらがコーランの至る所に記されている。その全てを信じることです。

アッラーの特質①＝「唯一」

「神は唯一」と信じるのがイスラムの重要な信仰箇条です。コーランには「神は唯一」と繰り返し強調されています。入信には「アッラーのほかに神なし」と宣言するのが条件です。

『もしアッラー以外の神がいたとしたら、混乱するだろう。』（21:22）

神が複数いたら、どの神に従っていいかわかりません。最も偉大な神は自ずと唯一。だから「神は唯一」と信じることは、人にとって自然で容易なことでしょう。

アッラーと並べて他の何かを崇拝すること（多神教・偶像崇拝）は重大な罪です。（これを（「シルクの罪」）と言います。）

『アッラーはほかのいかなるものとでも並べられたら絶対にお赦しにならない。そこまで行かない罪ならば‥赦してもくださろう。』（４:51）

なぜ偶像崇拝が罪なのか？偉大なアッラーの姿は人間には到底描くことはできない。だから人間が作ったに過ぎない偶像を拝むことは、アッラー以外のものを拝むことと同じだからです。

アッラーは慈悲深く、たいていの罪は許してくださいます。しかし多神教と偶像崇拝だけは別。それだけイスラムは一神教であるキリスト教、ユダヤ教に比べ、神の唯一性が徹底している宗教です。

アッラーの特質②＝自存する

「自存する」とは、他の何ものにも依存しない存在だということ。アッラーは何かから生まれたわけではなく、創られたものでもありません。

『アッラー、かれの他に神はなく、永生に自存されるお方。仮眠も熟睡も、かれをとらえることはできない。天にあり地にある凡てのものは、かれのものである。かれの許し無くして、誰がかれの御許で執りなすことができようか。かれは（人びとの）、以前のことも以後のことをも、知っておられる。かれの御意にかなったことのほか、かれらはかれの御知識について、何も会得するところはないのである。かれの玉座は、凡ての天と地を覆って広がり、この２つを守って、疲れも覚えられない。彼は至高にして至大であられる。』（2:255）

アッラーは人間のように何かを産むわけでもない。キリスト教はイエスを「神の子」として神格化していますが、イスラムではこれを厳しく否定しています。

この2:255は「玉座の節」と呼ばれ、コーラン中で最も大いなる節という預言者の言葉もあります。これを毎日の礼拝の後に読めば、天国行きが約束されているとされています。

アッラーの特質③＝全知全能

「神は全知全能」。これもコーラン全体を流れる大切なテーマです。明日何が起こるか、人がいつ、どこで死ぬか。それらを知るのはアッラーのみです。

『アッラー、本当にかれだけが、審判の時を知っておられる。彼は雨を降らせられる。また胎内にあるものを知っておられる。だが人間は誰も明日自分が何を稼ぐかを知らず、誰もどこで死ぬのかを知らない。本当にアッラーは全知にして、全てに通暁される御方であられる。』（31:34）

全能で偉大なアッラーに比べ、人間はあまりにも小さな弱い存在です。

『アッラーの知識に対して人が知ることができるのは微小にすぎない。』（17:85）

私たちがうっかり忘れていることも全てご存じです。

『アッラーはあなた方が隠すことも、現すことも知っておられる。』（16:19）

人はいつもアッラーに見られているということを意識することが大事なのです。

アッラーの特質④＝全てのものの創造主

アッラーはこの世の全ての物事を創った創造神です。

『アッラーは天と地のはじまりです。かれ（神）が万事を定めるとき、有れといえば即ち有るのです。』（２：117）

すべてのものを「人間のために」創った

神が世界を創造し、全ての物事を創ったのは、人間に利益を与えるためなのです。人間がその自然界を利用するため。神様は人間を特別扱いしてくださっています。

天も地も、風も、水も、動物も、人間のためにアッラーがお作りになったもの。地に花を咲かせるのも、人間の目を楽しませるため。夜をつくったのも人間を休息を与えるため。天に星をちりばめさせたのも、それで私たちの目を楽しませるため。動物は私たちがそれに乗ったり、それを食べるため‥。

そう思えれば、この世は神の恵みだらけです。（この恵みを「神兆（アーヤ）」と呼びます）。それを思えば感謝しかありません。自分がいかに多くの恵みを得ているか、それによって幸せな気持ちになれる。

しかもアッラーはこの世を創って終わりではなく今現在も創り続けている。朝日が登って日が沈むのも、アッラーの仕業。成功も失敗も、全て神様の思し召しです。

未来も神が決めること

未来も神が決めることです。ムスリムが未来に言及する時は、必ず「インシャー・アッラー（神が望めば）」と付け加えることになっています。

『インシャー・アッラーという言葉を付け加えないで、明日それをすると言ってならない。』（18：23・24）

イスラム圏では「インシャー・アッラー」をしばしば耳にします。「明日、○時に～で会おうね」と言えば、相手は「インシャー・アッラー」。

「神が望まないなら、来ないかもしれないの？」と日本人なら不安になりますが、本人はそんないいかげんな気持ちで言っているわけではありませんので、ご安心を。（＊イン・シャー・アッラー＊神が望むなら）

アッラーの特質⑤＝慈悲深い

偉大な神は人間をよく赦す神でもあります。コーランでは神の慈悲深さが繰り返し強調されています。

『自分の魂に背いて過ちを起こしたわがしもべたちよ、それでもアッラーの慈悲に絶望してはならない。
アッラーは本当にすべての罪を赦される。彼は寛容にして慈悲深くあられる。』（39:53）

イスラムにおいては、アッラーの絶対性が前提とされており、人間の責任がそれほど問われることはありません。罪を犯すか否かは、人間の自由意志もありますが、全てではない。アッラーの神意が加わっていると考えるのです。

よってアッラーの絶対性を信じ、敬虔なイスラム教徒であり続ければ、（多神教など重大な罪をのぞいて）犯す過ちはアッラーによって赦される。「人は能力以上のものを負わせられることはない」（2:286）のです。

アッラーの特質⑥＝人間の近くにいる

神は人間の近くにいる存在です。

『われは人間を創った。そしてその魂がささやくことも知っている。われは（人間の）頸動脈よりも人間に近い』（50:16）

だから神は人のやることを全てご存じです。

『アッラーは人間とその心の間に入られることを知れ。』（8:24）

近くにいらっしゃるので、願いはいつも叶えてもらえます。

『われは本当にしもべたちの近くにいる。かれがわれに祈る時はその嘆願の祈りに応える。」（2:186)

ムスリムの生活は常に神とあるのです。

アッラーの特質⑦＝最後の審判における公正な裁き主

アッラーは人の行いを全て見ており、最後の審判の時に公正に報いてくださる。誰一人として不当な扱いを受けることはありません。

『人間が行った善行を決して無視しない　そして最後の審判の日に天国の報いが与えられる。』（２１：９４）

『みな自分の稼ぎだかに応じた報酬をいただく。』（40;17)

「こんな良いことをして、誰が見ているんだろう？」「誰も評価してくれない」‥そんな虚しい思いはありません。神はちゃんと見てくれているからです。

ムスリムにとって、アッラーはいつも近くにいて自分を見ている存在です。どんな困難にあっても見守ってくれている。善い行いをしたら、ちゃんと評価してくれ、決して無になさらない‥これがに生きる上でのゆるぎない安心感・心の支えになっているのです。。

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