イスラムの結婚観と日本の結婚観はどう違う?
日本とイスラム圏の結婚・結婚観の違いとは?そんなご質問をいただきましたので、お答えします。日本で結婚しない・できない人が増えている要因を、イスラム社会との対比で考えます。
結婚への強制力のある・なし
イスラム圏の結婚にまつわる状況は、ひと昔前の日本のようなものです。「いい歳になったら結婚すべし」というプレッシャーが日本にもありました。「25歳はクリスマスケーキ」とか。今のイスラム圏はそんな感じです。
ただ日本のプレッシャーは社会習慣から生じるものでしたが、イスラムの場合、宗教からです。イスラムでは結婚を奨励しているのです。そして強制力という点では、後者の方が強い。神の命令だからです。
聖典コーランには「結婚すべき」と明記されています。
『おまえたちのうちの独身者、またおまえたちの男女奴隷のうち善良な者は結婚させよ』(24章32節)
「結婚は信仰の半分」というハディース(預言者ムハンマドの言行録)もあります。だから結婚は半ば義務。しかも、なるべく早い結婚が良いとされているため、そこそこの年齢に達した男女は、なるべく早く結婚したがります。
ほのぼのとした結婚観 vs人生の墓場
イスラムの結婚観はとてもほのぼのしたものです。コーランには「夫婦は互いに体を温め合い、安らぎと愛情をあたえあうもの」と書かれている。
『お前たちのために、お前たちの体の一部から妻を創り出し、安んじて馴染める相手となし、二人の間には愛と情を置き給うたとは。 考えぶかい人間なら、これこそ有難い神兆よとさとるであろう』(30章21節)
愛と情にあふれた夫婦ばかりではないでしょうが、社会全体に「結婚は良いもの」という考え方が満ちあふれている。日本では「結婚は墓場」などと言われたりしますが、こういう言葉は思いつきもしません。
おせっかいおばさんの存在
イスラムで結婚を奨励しているため、独身者を見ると周囲がほっておきません。独身時代、私はエジプトの遊牧民のもとへ足繁く通っていましたが、当時、周囲の遊牧民たちは「なぜ結婚しないのか」と、本当にうるさかった。頼みもしないのに、独身のエジプト人男性を紹介してくれたり。外国人に対してですら、こうですから、現地人同士ならなおさら。だから黙っていても結婚できてしまいます。
(*黒づくめでどうやって相手を見つけるの? *イスラム社会婚活事情)
出会いが多いゆえの結婚難
イスラム社会では男女の出会いが少ないぶん、これが若者を結婚へと向かわせるドライブになっています。自由恋愛が禁止、学校なども男女別。ふだん異性と接するチャンスが限られているため、たまたま知り合って良い感じになると、一気にポーっとなってしまいます。「この人と結婚しないと、もう相手が現れないかもしれない」。そして一気に結婚へと進むのです。
周りに異性があふれている状態では、なかなかそうはなりません。「他にもっと良い相手がいるかも」「今結婚しなくったって、いつでも相手が現れる」などと思ってしまう。このために結婚が遠のいてしまうということも。選択肢が多いということは、一見自由なようでいて実は不幸なことかもしれません。
独身者にやさしいかやさしくないか?
結婚を奨励する社会のため、イスラム圏では家族前提で社会が成り立っています。独身者は非常に肩身が狭い。日本のように「独身を謳歌する」などという考え方はありません。独身者用のアパートなども非常に限られています。手軽で便利な惣菜屋も少ない。サンドイッチ屋などはあるものの、毎日3食サンドイッチばかり食べているわけにはいきません。
日本は独身者には便利な社会です。コンビニもスーパーのお弁当やお惣菜も充実していて、安く家庭の味が楽しめる。性欲さえも、手軽に満たせてしまう。イスラム社会ではなかなかこうはいきません。
結婚しなくてもセックスできる
イスラムでは婚外性交渉は厳禁ですから、男性はやりたければ結婚するしかない。だから誰でも早く結婚したがるのです。
結婚に際して男性の経済的負担が重いのは、日本と変わりません。むしろそれ以上です。男性は結婚に際して家を用意しなければならないし、結婚式の費用も基本すべて男性持ち。結婚後の生活費も男性の負担です。*イスラムの結婚は男性の経済的負担が大|マフル、持ち家、離婚時の慰謝料
それでも「結婚したくない」と考える男性はほとんどいない。1つには結婚まで「できない」からです。日本のように結婚前に何でもやりたい放題では、結婚へのありがたみ、あこがれは遠ざかり、ついには「墓場」と言われてしまったりする。日本の晩婚化は、日本が豊か&便利&自由になった結果かもしれません。
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