ウンマとは?*世界中のムスリムを結びつけるしかけ
ウンマとは?
ウンマ(أمّة )とはイスラム共同体のこと。世界の全イスラム教徒がつくる、国を超えた1つの大きな共同体です。
コーランではウンマについて「お前たちは、ただ1つの集団。わしがお前らの主」(23:52)と書いています。つまりムスリム(イスラム教徒)が1つの共同体を作ることは、イスラムの教えの1つ。
ここで大事なのは、ウンマが2つも3つもあるのではなく、1つだということです。中世の時代は王朝がいくつかあったとはいえ、全体として1つのウンマがありました。
今は近代国家があり、ウンマは実際には存在しません。それでも「世界のムスリム(イスラム教徒)は1つ」という理念は今も生きています。
イスラーム諸国会議
現在イスラム諸国が団結する組織として、イスラーム諸国会議機構(OIC)があります。
設立は、1967年に東エルサレムがイスラエルに占領されたことがきっかけです。
エルサレムはイスラムにとってはメッカ、メディナなにつぐ第三の聖地です。(聖地としてのエルサレムは東エルサレムのこと。西エルサレムは近代の新市街地)。
エルサレムはキリスト教、ユダヤ教においても聖地ですが、19世紀までは共存が保たれていました。それがイスラエルに軍事的に占領されてしまった。これほど世界中のムスリムに衝撃的な事はありませんでした。
そこでイスラム諸国は団結するため、イスラム諸国会議機構を越立したのです。
現在57か国がメンバー。この中にはエルサレム委員会があり、このイスラエルの占領を終了させ、東エルサレムの返還を求めるために活動してきました。
ムスリムが連帯した戦い
同じイスラム教徒が他国で危機に瀕している際には、助けにいきます。
1979年から89年のアッラー のソ連侵攻に対する闘争、1994年のボスニアのイスラム教徒に対する民族浄化、1997年のコソボのアルバニア系イスラム教とに対する民族浄化、そして今も続いているパレスチナ人の窮状‥。
またトルコやアフガニスタンの地震など、イスラム世界の自然災害の被害者を支援するため、熱心に募金活動を行っています。
こうして何かあれば、イスラム教徒として国を超えて団結するのです。
ムスリム信徒はみな兄弟
イスラムの中には「信徒はみな兄弟姉妹」という教えもあります。実際、信徒同士であれば国籍が違っても助け合うのが普通です。
今から20年以上前、私はスーダンを旅行しました。その道中、イエメン人男性、スーダン人女性と知り合い、行動をともにしていたことがあります。イエメン人男性は20代。陸路でリビアを目指していました。リビアで仕事を見つけるためです。彼は旅の道中、スーダン人女性の食事代・お茶代をすべて払っていました。ですからてっきり家族か親戚かと思っていたのですが、実際には赤の他人。旅の途中で知り合っただけだという。
なぜそこまで助けるのかとたずねると、彼は「彼女も同じムスリムだから」と。同じ宗教を信じていることで、家族のようなつながりが生まれるのです。
ムスリム同士の連帯感を高める要素
ウンマの教えだけでなく、イスラムには信者の一体感を強める要素がたくさんあります。
礼拝や断食、結婚契約などはイスラム世界で共通です。世界中のムスリムが同一のアラビア語で書かれたコーランを読みます。
礼拝のやり方も世界共通です。同じアラビア語、同じ動作で、メッカの方向に向かって行います。
ラマダン月の断食は世界中の人が同じ日に始め、同じ日に終えます(厳密には、国によって1日ずれたりします)。
メッカ巡礼では、すべてのムスリムが白い布2枚だけを体に巻き、同じ儀礼に参加します。
あいさつも共通です。「こんにちは」は、アラビア語の「アッサラーム・アレイクム(あなたたちに平安がありますように)」で、この返事は「ワ・アライクム・サラーム(そして、あなたたちにも平安がありますように)」。(「サラーム」は平和、平安を意味しています。)
言葉が通じなくても、この挨拶だけは通じます。こうしてあいさつしながら互いに相手の平安を願う。この麗しい挨拶が、私はとても好きです。
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