西スマトラ・ブキティンギのおばあさんが暮らす家
インドネシアでは老人はどんなふうに暮らしているのか?パダンのモスクのイマームが「両親を施設に預けるのは最大の恥」と説教したという話を書いたので、気になっていました。西スマトラ・ブキティンギの村落部で、おばあさんが暮らす家を訪れました。
75歳のおばあさんの家
一人目は75歳のおばあさんの家。ある売店で売られていたドリアンをお店で食べていたところ、そこにふらりと現れたのが、上の写真のおばあさんでした。おばあさんは売店の目と鼻の先で、一人暮らしです。
おばあさんには息子さんが2人いますが、都市に働きに出て行ってしまい、戻ってこないそう。売店の女性にも2人息子がいるものの、ジャカルタで美容院をやっています。村には仕事がなく、若い人は都市に出て行き、そのままそこで結婚、家を借りるか買う。だから村には戻ってこない。いずこも同じです。
こちらがおばあさんの家。売店の女性とおばあさんは親戚でも家族でもありませんが、女性は1日に1回はおばあさんの家を訪れ、様子を見ているそう。時にはおばあさんにお金をあげたりもなさるとか。もちろん息子さんたちからの仕送りもありますが。おばあさんも毎日、売店にふらりとやってきます。
家の中は、とてもすっきりと片付けられていました。おばあさんは炊事・洗濯・掃除と全ての家事を自分でこなします。朝食はパンとお茶、昼と夜はごはんを召し上がるそう。
広いリビングの横に、カーテンで仕切られた個室があります。飲み水は買っていますが、それ以外の水浴びや洗濯の水は山からの湧き水を使っているそう。
このおばあさんは、なかなかお元気で、女性からもらったドリアンをあっという間にたいらげると、私が食べているドリアンを指して、「それ、ちょうだい」。そのぐらい食欲旺盛なら、この後何年もお元気でしょうね。
95歳のおばあさんの家
次は95歳のおばあさんの家。息子さんと2人暮らしです。この家は築100年くらいだとのこと。
外からは地味に見えましたが、室内は天井が高く、広々としていて驚きました。リビングの中央のベッドにお母さんが寝ていました。足の手術をしたばかりで、歩く時は車椅子です。
息子さんの寝室。こちらもすっきりと片付けられており、思わず(ほお〜)とため息が出ます。
足を痛めたおばあさんは、1日のほとんどをベッドの上で過ごします。水浴びは息子さんが抱えてするそうです。息子さんの奥様はすでに亡くなり、この家でお母様と2人ぐらし。
台所も拝見させていただきました。とても広く、自然光がさんさんと差し込みます。
調理はガスレンジも使いますが、この家には木をくべて料理する炉もありました。インドネシアにはルンダンという肉を長時間煮込む料理があるのですが、ルンダンなどを料理する時に、この炉を使います。薪で料理した方が美味しくなるそうです。
炊飯器を開けると、炊き立てのご飯が。メーカーはmiyako。日本製です。
リビングや台所から一段降りたところに、バスルームや洗濯のスペースがあります。
息子さんは仕事をやめて、お母様の世話に専念しています。「お母様を施設に入れたりとかは考えないのか?」と聞くと、「そんなことは考えたこともない」。
私たちの会話を聞いているのか聞いていないのか、おばあさんは寝ているように見えて、時々うっすらと目を開けたりします。そのお顔はこの世とあの世をいったりきたりしているようでもあり、どこまでも安心感に満たされているようでもありました。