エジプトの太陽パン・エイシュ・シャムシ-Eish shamsi*エジプト家庭料理
エジプトの主食はパン。最もポピューラーなパンは「エイシュ・バラディ」という全粒粉の平たいパンですが、田舎の家庭ではもっぱら「エイシュ・シャムシー(太陽パン)Eish-shamsiを手作りして食べています。文字通り、パン生地を日なたに干して発酵させてから焼いたもの。直径は15~20cmほどで、手に持つとずっしりと重いです。かなり食べ応えあります。
エイシュ・シャムシーを食べるのは、主に上エジプト(カイロ以南のナイル川沿岸)や西方オアシスの村々ですが、カイロなどでも人気があって、市場ではけっこう良い値段で売られています。近隣の農家のお母さんが、自宅で焼いたものを売りにくるのです。
エジプト人は食べ物に関して「手作り」に強く愛着を持つ人たちです。主食であるパンはもちろん、スペースに余裕があれば動物なども自分の家で育て、その肉を食べるのを好みます。買ってきた動物の肉は「どんなエサを食べているかわからないから」。
それに自分で育てた動物の肉の方が美味しいからだそう。パンも同じく、自分で焼いたパンの方が美味しいのでしょうね。私はエイシュ・シャムシーはもちろん、パン屋のエイシュ・バラディも両方大好きですが。
エイシュ・シャムシーの材料と作り方
材料は水と小麦粉と塩、少しのふくらし粉だけです。(農家では自分の家の畑でとれた小麦粉を使います)。これはこれらを混ぜてこねて、一晩寝かせます。
翌朝、生地を型にのせ、日なたに干して発酵させます。この「型」は、以前は牛糞と土を混ぜて固めたものを使っていましたが、今は紙と水をまぜたものです。
日なたなら30分~1時間で、日陰なら3~4時間で発酵します。
日なたに干す代わりに、電気ストーブをたいた部屋で、温めて発酵させる家庭もあります。外に並べるという手間が省けるから?あるいはパンの表面にホコリがつくのが避けられるから?理由を聞くのを忘れてしまいました。次回行った時に聞いてみます!
パンを焼く窯
パンを焼く窯は、ほとんどの家で自作します。材料はわらと土で、それらを混ぜてこね、下から積み上げていきます。作り終わったら、枯木をくべて空焚きして補強。それからパンを焼きます。窯は頻繁にパンを焼けば10年くらい、そうでもなければ、もう少し長くもつそうです。
窯には開口部が2つ。写真の右下の穴は燃料をくべるもの。左の穴はパン生地を入れるもの。
窯を十分温めて、パンを焼きます。燃料は、サトウキビの収穫後の幹や畑などで取れた枯れ木など。そして焼く時は、熱が外に逃げないよう、燃料の入り口はふたをしておきます。
西方オアシスの村では、土窯ではなくオーブンで焼いている家が多いようでした。土窯の人曰く、「ガスで焼くよりも、匂いが良いわ」。パンを焼く時の匂いや、パンの匂いが、窯で焼いた方が良いそう。味ではなく「匂い」というところに、新鮮味を感じました。
窯で焼く時間は、だいたい30分ほど。時々中を見て、焼き具合を確かめます。
パンの表面を叩いて、ぱんぱんと軽快な音がしたら、焼き上がった証拠。
パンを焼くのは手間がかかるので、10日から2週間ぶんまとめて焼きます。家庭にもよりますが、1回に焼くのは30個くらいです。午前中いっぱいくらいかかります。
2、3日分だけ残して、あとは冷凍しておきます。冷蔵よりも冷凍の方が味が保たれるからだそう。家族4人の家庭では、朝食にエイシュ・シャムシ-1個、昼食に2個、夕食に2個ほど食べるそうです。
村の朝に散歩をしていると、どこかの家からもうもうと煙が上がっていて、「ああ、あの家では今日パンを焼くんだなー」というのがわかります。エジプトの村の風物詩みたいで、なかなか良いものです。