エジプトはどんな国?*観光の魅力と女性一人旅

バハレイヤ・オアシスの近郊に広がる白砂漠。岩が風に削られてできた、奇妙な形の岩石がたちならんでいる。
エジプトの地理と気候

地中海に面したまちアレキサンドリア。カイロに次ぐエジプト第2の都市。
エジプトはアフリカ大陸の北東部にあり、面積は日本の約2.7倍。国土の90%が砂漠です。
国の南北を流れるナイル川は、世界でもっとも長い川で、長さは約6690km。水源はエチオピアにあり、地中海に注いでいます。人口のほとんどがナイル川沿いに集中しています。
季節は夏季(5~9月)と、冬季(11月~3月ころ)。地中海の沿岸は、1年を通して過ごしやすい地中海性気候です。全体的に砂漠気候なので、朝晩の寒暖差が大きいです。
旅行するなら、過ごしやすい10〜11月、3〜4月がおすすめ。ただし3〜4月はハムシーンという砂嵐が吹くこともあります。
アラブ・イスラム世界の中心

アズハル・モスク。970年にモスクとともに建設されたマドラサ(学校)は、世界でもっとも古い大学の1つで、アズハル大学として現在にいたっている。
7世紀にイスラムが伝わってから、エジプトはイスラムの文化や学問の中心として栄えてきました。
カイロには、10世紀に設立された、スンニ派の権威アズハル(大学も備える総合宗教機関)があり、世界中のスンニ派の学生たちが学んでいます。エジプト人の9割がスンニ派イスラム教徒です。
またエジプトはアラブ諸国の一員で、言語はアラビア語。アラブ世界で最大の人口をもち、多数のエジプト人が他のアラブ諸国で働いています。エジプトで制作される映画、テレビ番組はアラブ全体で放映され、アラブ人の多くが、アラビア語のエジプト方言を理解できます。
スンニ派とシーア派:分かれたきっかけは、預言者ムハンマドの後継者争いで、ムハンマドの子孫こそが後継者にふさわしいと考えたのがシーア派、血統ではなく能力で決めるべきと考えたのがスンニ派。
信仰心の強いエジプト人

カイロのダウンタウンのスークで金曜日の昼の礼拝をする人びと。この日の昼の礼拝は最も大切なものとされ、男性は近くのモスクで礼拝することが定められている。そのため、モスクに入りきらない人が、外に並んで礼拝する。
エジプト人の多くは熱心なイスラム教徒です。イスラムの教えは「この世の終わりの日に人びとは神の前で審判を受け、良い行いをした人は天国へ、悪い行いをした人は地獄へ行く」というものです。
良い行いをするために、日常生活に関するさまざまなことが決められています。1日5回礼拝をすることや、貧しい人に施しをすること、ラマダン月に断食をすること、サウジアラビアのメッカに巡礼に行くことなどです。
教えの中には両親にやさしくすること、お金を浪費しないこと、あいさつをきちんとすることなど、日本の道徳のようなものもあります。
エジプト人の服装

カイロ中心部の目抜き通りにて。ピンクのスカーフの内側の白い布は、髪の毛を完全にかくすためのもの。
男女とも肌を見せない服が基本です。男性は半袖を着る人もいますが、半ズボン姿はほぼ皆無です。女性はスカーフで髪をおおいます。(*エジプト女性の最新ファッション事情)
エジプト旅行でもっとも気をつけたいのが「服装」です。私の友人が半袖を着ていて、触られたことがあります。女性の肌を見慣れていない現地男性にとって、たとえ腕であっても十分に刺激的なのです。
民族衣装*ガラベイヤ

カイロのモスクにいた、ガラベイヤ姿の男性たち。年配の男性は髪を布で覆う人も多い。
エジプトの民族衣装は、ガラベイヤというくるぶしまでかくれるゆったりしたワンピースです。家で着る普段着として、礼拝に出かける時などの外出着として根強い人気があります。ゆったりしたワンピースは砂漠の強い日差しや暑さ、乾燥、砂ぼこりなどから体を守ってくれます。
エジプト料理

左からモロヘイヤスープ、その下がサラダ、油で料理したご飯、アヒルのグリル、スープ、白インゲンのトマト煮込み。
代表的なエジプト料理はモロヘイヤ・スープやフール(ソラマメの煮込み)、エジプト庶民のファーストフードコシャリなどです。スパイスを多用しないので、日本人の口にもよく合います。
料理には油やバターをたくさん使います。野菜は油を使って料理し、多くはトマト煮込みにします。お浸しという料理法はありません。ご飯も油で炒めてから炊き込みます。
ムスリムが大多数なので豚肉は食べません。それ以外の肉も、食べられるのは宗教の教えにそった方法で食肉処理したものだけです。
首都カイロ*人口の4分の1

カイロを流れるナイル川。奥にはナイルタワーが見える。ナイル川にかかる橋の道路は、朝晩の通勤時間帯には渋滞する。
カイロは、人口の約4分の1がくらすエジプト最大の都市。カイロは4つの地区からなっています。
1つ目は①1、2世紀頃から栄えた南部のオールドカイロ。カイロでもっとも古い地区で、キリスト教関係の建物がたくさん集まっています。
②イスラムの時代に栄えた東部のイスラム地区(イスラミックカイロ)。モスクなどのイスラム建築が多数残り、世界文化遺産に登録されています。

中世のまちなみが残るイスラム地区。手押し車やロバ車が行き交い、伝統的な姿が保たれている。
③中心部のダウンタウンと呼ばれる新市街。政府の機関や高層ビルがたちならんでいます。④そして砂漠地帯でピラミッドがあるギザ地区です。
エジプトの交通

細い路地でも走ることのできるオート三輪は、庶民の便利な移動手段。
国土の南北を貫く鉄道があります。1854年にアフリカ、中東ではじめて開通した鉄道で、約6700kmの線路網。
また長距離の移動は大型のバス、近距離や町中の交通はミニバスが活躍しています。カイロには、アラブ世界で初めて開通したメトロもあります。

ミニバスの運転手は、運転しながら乗客が集めた運賃を計算。そして各自に渡すお釣りとして、小額紙幣を人数分選り分ける。
エジプトで楽しいのはミニバスです。運賃は移動中に乗客が集めます。最後尾の人がその列の料金を集めて前の列の人にわたし、その列の人が集めた分を足して前の列にわたし、最前列の人が全てまとめて運転手に渡します。
運転手は運転しながら集められたお金を数え(!)、お釣りが必要な各人に小額紙幣を返してくれます。
庶民のいこいの場*アフワ

エジプトのカフェの多くはオープンカフェで、外のイスに座って道ゆく人を眺めたり、通りがかりの知人と言葉を交わしたりする。
エジプトの町中にはいたるところにカフェがあります。人気があるのはアフワという昔ながらの喫茶店。男性はたいてい行きつけのアフワがあり、そこで顔見知りに会い、近況を報告しあいます。アフワは大切な大人の社交場です。

カイロのアフワでサッカーを観戦する男性たち。家で見ていると奥様に「あんた、テレビばっかり見ないで家のこと手伝ってよ〜」と言われるから?
アフワでは飲み物や会話を楽しむだけでなく、テレビでサッカーの試合を観戦したり、ゲームを楽しんだりもします。エジプトでは大人もサッカーが大好き。サッカーの試合がある夜は、多くの男性がカフェのテレビの前に集まり、実況中継を見ながら、ひいきのチームを応援して盛り上がります。
エジプトの治安

公園で踊るエジプトの男性たち。イスラム社会の人々は踊るのが大好き。結婚式は歌と踊りがメインで、この時は男性だけでなく女性も入れ替わり立ち替わり得意なダンスを披露する。
普通に旅行するなら全く問題ありません。2011年に反政府デモ「アラブの春」が起こりましたが、そのため観光地では多くのツーリストポリスが厳重な警備を実施しています。
私がエジプトに暮らしていた時は、夜中の女性の1人歩きも全く問題ありませんでした。スラムに近い場所に何度も入り込んでいますが、身の危険を感じたことは一度もありません。(だからといって、あえて人気が少ない場所へ行ったり、夜中に一人歩きするようなことは、おすすめしません)。
ホールドアップにあったりとか、いきなり見ぐるみはがされたりなどは、エジプトではまず考えられないでしょう。
*現時点での詳しい安全情報は「外務省海外安全ホームページ:エジプト」をご覧ください。
女性の一人歩き

カイロの路地裏。こんな場所でも、女性の1人歩きは問題ない。
夜間人通りの少ない場所をのぞけば、女性1人でも特に問題ありません。私は男性しかいないようなローカルなカフェや食堂にも入りますが、トラブルは一度もありません。
エジプト人男性

動物園を散歩していた男性たち。エジプト人男性はノリがいい人が多い。
日本人女性はモテるので、会ってすぐに「結婚しよう」と言われることは確かにあります。(*アラブ人男性と結婚を考えたら*知っておきたいこと)
断れば、それ以上しつこく誘ってくることはありません。2人だけでお茶をしたりするのは、相手に変な誤解をされてしまいます。現地の女性は婚約者でもないかぎり、2人きりで会ったりはしません。
エジプト人の写真
エジプト人は総じて写真好きです。カメラを向けたら、皆ニッコリして応じてくれます。相手の了解を得て撮るなら問題ありません。
交通事故は要注意

バイクに乗ったエジプトの家族。エジプトでは4人乗り、5人乗りも少なくない。見事なバランス感覚!バイクはもちろん日本製。
1番の危険は交通事故です。特にカイロの車は運転マナーが荒い。道路を横断する時は、十分に注意を。交通量が多くて渡るのが怖い道は、現地の人と渡りましょう。実際、地元の人も手をつなぎあって渡ったりしています。
最大の魅力は「エジプト人」

エジプトの結婚式で民族舞踊を踊るダンサー。お腹が出ているのは妊婦をモチーフにしているため。「新婦が早く赤ちゃんに恵まれるように」という意図が込められている。
観光地に行けばしつこい客引きもいたりしますが、ほとんどのエジプト人は心の温かい人たち。道を聞けば、その場所までわざわざ連れて行ってくれたり、少々おせっかいすぎる人も。
女性一人旅では、もちろん気をつけることはありますが、必要以上に大きな警戒心を持ちすぎる必要はありません。
エジプト旅行の最大の魅力はエジプト人(と私は思っています)。そして個人的には、エジプシャンとのふれあいを楽しむのが、エジプト観光の最大の楽しみであると思っています。
コメントを残す