パダンのイード・アル=アドハー(犠牲際)2024
今年のイード・アル=アドハーはインドネシアで過ごしました。西スマトラの中心都市パダンにて 、友人のAさん夫婦とともに。
イード・アル=アドハーはイスラムの2大祭りの1つ。メッカ巡礼が行われる巡礼月(イスラム暦第12月)の10日に行われます。
両親を大切にすること
朝7時、Aさん宅近くのモスクで礼拝。その後はイマームによる説教(ホトバ)を拝聴しました。
説教(ホトバ)はイスラムについての講話で、世界情勢やイード、その他イスラムにおける大切なことなどが話されます。この日の話の中心は「両親を大切にすること」。
私たちが一番大切にしなければならないのはアッラーですが、その次が両親、特に母親です。9ヶ月もお腹の中で妊娠して、苦労して産んでくれたからです。
「今では介護施設もあるが、そういうところに両親をあずける人は、人として最も大きな恥を行っていることになる」とイマーム。日本人としては頭が痛いです。
断食明けの食事
礼拝後、Aさんの友人でもあるイマームの家に招かれ、断食明けの食事をいただきました。インドネシアではイード・アル=アドハーの日、朝の礼拝まで断食することになっています。
イマームの家はプールもある豪邸。彼は不動産業を営む裕福なビジネスマンで、ジャワ島など色々な場所で不動産の売買をしているそう。「インドネシアはアジアの発展途上国」という私の古臭いイメージを見事にくつがえしてくれました!
朝食でいただいたのは、ロントンという米のプリンみたいなものやカレースープ、舌が落ちるほど美味しい甘いデザートなどなど。イマームご夫婦のご好意に甘えて、たっぷりいただいてしまいました。
牛をほふる
イード・アル=アドハーの日、人々は動物をほふります。これはイスラム教徒の大先祖アブラハム(イブラヒーム)が、一人息子のイシュマエルを神の命令にしたがって犠牲に捧げようとした故事にもとづくもの。
イードでほふる動物は国や地方によって様々で、ヤギであることも多いのですが、インドネシアでは牛です。理由はAさんによれば、「ヤギより牛の肉の方がいい。人が集まらないと買えないから」(それだけ人々が協力し合うことになる)。
午前9時くらいから、モスクの敷地で牛をほふりました。牛は合計5頭。7軒の家で協力して1頭の牛を買います。ほふる牛の数は毎年違い、昨年は8頭。10頭だったこともあるそうです。
牛の足を縛って動けないようにしてから、ほふります。ほふるのはAさんとイマーム。毎年牛を殺す役目だそう。Aさんがほふったら、次はイマームと交代交代でほふります。
Aさんに「牛を殺して悲しくはないですか?」ときくと、「牛は喜んでいるよ。私たち人間が食べるのだから。全ての生き物は人間が食べるために神が与えてくれたものだから」。
ほふった牛の内蔵を近くを流れる川で洗います。内臓も全ていただきます。
ほふった肉をボランティアの男性たちが解体します。
肉は全員に公平に分配
ほふられた肉は均等に分けられ、袋に入れられます。それらが全ての住民に配られる。ゆるくモスクの管轄の住民というのが決まっていて、そのメンバーである家庭すべてに肉が均等に分けられます。牛のお金を出していない人にも、もちろんです。
配るのはクーポン制。クーポンが一家に一枚配られ、そのクーポンと引き換えに肉をもらいます。肉が入った袋は通常は白ですが、牛のお金を出した人の家は、写真にある赤と白の袋(白より肉量が多い)。
昼の礼拝の後に人々がバイクで乗り付けて、肉をもらいにきます。複数のクーポンを持っている人が多い。きっとバイクがない近所の人の家に頼まれたのでしょう。最終的に袋が余ったら、貧しい人に配ります。
その後はAさん夫妻と近所を散歩。各家から肉を料理する香ばしい匂いがただよってきました。