イスラム女性はどんなおしゃれをしている？②ヘナ・アート　

イスラム女性たちのおしゃれの１つが「ヘナ」。真っ黒なアバヤからのぞく手に、綺麗なヘナ模様が描かれていることも多く、思わずドキッとさせられます。女性たちは、どんなふうにヘナを楽しんでいるのでしょう？

ヘナ（ヘンナ）とは？

ヘナとは、植物の葉からつくる染料。抹茶のような緑色をしています。この葉を乾燥させてすりつぶして粉末にしたものがヘナです。水を加えてペースト状にし、皮膚や髪につけます。

しばらくして乾いたヘナをぼろぼろとこすり落とすと、付けた部分がオレンジ色に染まります。

ヘナはミソハギ科シコウカ属の植物で、原産地は北アフリカか西南アジアだとのこと。古代エジプトの時代には、女性の手足を彩る飾りや魔除として使われていたそうです。

ただ今イスラム世界で売られているヘナは、ほとんどがインド製です。

ヘナの美容＆健康効果

ヘナのおしゃれ①は、その美容効果を利用するもの。ヘナは植物が原料なのでナチュラルで体に良く、デトックス効果もあります。

アラブにはハマム（公衆浴場）という公衆浴場があり、そこで女性たちはもっぱらアカスリにいそしむ。その時ヘナを持参し、アカスリする前にヘナを塗るのです。ヘナのデトックス効果によって、アカがじわじわと肌の中から出てきます。

アカスリを終えたら、ふたたび肌にヘナを塗る。トリートメントです。

髪にもヘナを塗ります。ヘナによる染色効果に加え、髪がしっとりつややかに。最近は日本でもヘナがナチュラルな白髪染めとして注目されていますが、それはアラブイスラム圏でも同じ。私も使っていますが、ヘナをした後は髪がしっとりします。

頭皮や肌にヘナをつけると成分が身体に吸収され、毒素が排出されて体調がよくなる人もいるそうです。

ヘナ・アート

おしゃれ②は、手や足にヘナで模様を描くもの。アラブの女性たちは美しいヘナ模様への憧れがとても強く、腕の良いヘナアーティストは、どこでもひっぱりだこだそう。良いアーティストを見つける方法は、これまでは口コミでしたが、最近はもっぱらSNSです。

チュニジアでヘナ・アーティストとして活躍するリームさんの仕事場は自宅。その自宅は住宅街のかなり奥まった場所にあります。それでもお客がひっきりなしにやってきて、忙しい日は20人くらいに描くこともあるとのこと。ヘナの仕事を始めてたったの１年ですが、これまで描いてきた人数は「数え切れいないくらい」。

もともとヘナが好きで、見様見真似で描いていたそうです。それを遊びでフェイスブックやインスタグラムにアップしていたところ、見た人が「ぜひ描いてもらいたい」と連絡してくるように。やがて彼女の評判が口コミで広まり、あっという間に人気アーティストになったのです。

ヘナが縁で結婚

さらにリームさんとご主人の出会いもヘナでした。夫のお姉さんが彼女のお客だったのです。

リームさんが独身だと知ったお姉さんは、「うちに独身の弟がいるけど、どうかしら？」。家にいながら稼げるヘナ・アーティストは花嫁としても望ましい存在。イスラム圏の男性の中には、女性が外で他の男性と同じ職場で働くのを嫌がる人もいますから（最近はごく少数ですが）。

リームさんはただいま25歳。４歳と１歳のお子さんがいて、もちろん家庭は円満です。

★【写真集】「イスラーム ヴェールの向こう」

イスラム女性たちのリアルな日常を紹介。モロッコ、チュニジア、エジプト、イラン、パキスタン、モルディブ‥‥。歌あり踊りありデートあり。「抑圧」などメディアによって作られたイメージと違う、生き生きした女性たちの実像を紹介します。