ロル族が住むリンゴの里*イランの暮らしとごはん
ザークロス山脈の麓にあるロル族が暮らす村に滞在しました。ロル族(LurまたはLor)は、主にイラン南西部や南部に住む暮らす人々で、人口は推定で200万人以上。ロル語を話します。(イランの公用語であるペルシャ語も話せます)
山々に囲まれた谷間にあるこの村には70家族ほどが暮らしています。主な農産物はリンゴで、村で収穫されたりんごは、シーラーズ、テヘラン、イスファハンなどに売られます。村の人はほとんどが農民か建設業に携わる人々です。
収穫したりんごをロバで運ぶ人。
滞在した家でまず最初にいただいたのが、たくさんの果物です。山盛りのぶどうとリンゴ、バナナ、クルミ‥‥。どれも村でとれたもの。イランでは来客があると、まず食べきれないほどの果物でもてなします。日本人がお菓子とお茶でおもてなしするように。
滞在した家。階段を上がったところが居間、手前左手が個室、階段の右下にシャワールームがあります。庭はとても広くて、ここでバーベキューをしました。
台所から居間を眺めたところ。主な家具はストーブだけというシンプルさです。イランの家ではテーブルや椅子がないことが多く、床の絨毯の上に座ってくつろぎます。ここで食事をし、お茶を飲み、そして夜には布団を敷いて横になります。村に滞在したのは10月で、まだそれほど寒くない時期でしたが、家の中では一日中ストーブがたかれていました。
庭でチキンケバブ
ランチにチキンバーベキューをいただきました。実はご主人がタクシードライバーで、彼が運転する車に乗ったのが縁で、家に招いていただきました。左が奥様。英語は話せませんが、目があうとニコーっと満面の笑みを浮かべてくれる、いっしょにいるだけで心が温まるような人でした。
庭では奥様がバーベキューの準備。コンクリート打ちっ放しの庭の中央に、土がむき出しになった場所があり、その真ん中に大木を並べます。おそらくこの土がむき出しの場所は、バーベキューをするために、わざとこうしてあるのでしょうね。そのくらいイラン人はバーベキューが大好きなのです。
大木に火がちょうど良い具合に回った頃、ご主人が肉を火にかけます。
焼き上がったチキン。付け合せはヨーグルトと生のタマネギ、キュウリ。焼きたての炭火焼チキンはとても柔らかでした。味付けは塩だけです。
りんごの里
その後ご家族が所有するりんご畑へ。100本以上のリンゴの木が植えられていました。地面のあちこちにリンゴが落ちています。収穫は自然に下に落ちたものを拾うそうです。それらを一箇所に集めます。
村にはあちこちに野生のぶどうの木など、果物の木、クルミの木などが生えています。村の人は、クルミの実を取る時は、クルミの木の下に来て、高い場所になっている実めがけて石を投げます。こちらとしては、空中を飛ぶ鳥めがけて石を投げるようなものだと思いますが、ちゃんとクルミに命中するから驚きです。殻を手でぎゅっと押しつぶして中身をとり出します。香ばしく甘い。
山の上の方には水がわいていました。それを皆ですくって飲みます。湧き水、リンゴ、ぶどう、クルミ、たくさんの名も知れない果物‥‥月並みですが、とても豊かです。
ロル族の民族衣装
奥様はふだんロル族の民族衣装を着ていています。歩くたびにロングスカートの裾がふんわりと揺れ、とても優雅。
この衣装は手に持ってみるとずっしりと重く、一見ワンピースのように見えますが、上着とスカートはセパレートです。上着は長く、左右にスリットが入っていて、それをスカートの前と後ろにたらすので、ワンピースのように見えるのです。
この家のお嬢さんたちは、みなジーパン姿。ー民族衣装を着ないの?と聞くと「古くさい」、「アクティブじゃない」、「洗濯がめんどう」とのことで、あまり着用しないそうです。あと50年もたてば、この衣装を着ている女性はいなくなってしまうでしょうか‥。少しさみしい気もします。
夕食のもりつけ。メニューはアーブグーシュトです。
この家でいただいたアーブグーシュトには、レンズ豆とドライレモンが入っていました。
食事は床に座って。
右から大盛りのごはん、アーブグーシュト、生野菜サラダ、そして左上に生のタマネギ。
パンは自家製です。この地方独特の、鉄板で焼く薄っぺらいパン。まとめて焼いて、保存しておきます。