イスラム女性の化粧はハラーム(禁止)?
イスラム女性のおしゃれ①イスラム女性の情熱メイク術を読んだ方から、「イスラムでは女性が化粧をするのを禁止しているのでは?」とご質問がありました。
イスラム法学者からいただいた回答を、私なりにわかりやすく要約してご説明します。
化粧は一定の条件下で合法
イスラム女性の化粧は基本的に合法ですが、それは「一定の状況のもとで」です。自分自身で化粧を楽しんだり、夫や家族の前で化粧をしたり、女性同士で集まったりする場合だけ。
ただし公共の場であっても、気品を保ち、節度ある整いのために化粧をするなら「許容範囲」です。
肌荒れなどを防ぐために使用するもなら、公共の場でも使用可能(アルコールを含むものは除く)。ただし礼拝のために浄めを行うときには、化粧を落とします。
不特定多数の男性へのアピールは禁止
化粧が禁止されるのは、大勢の男性に自分の美しさをアピールするような場合です。これはコーランの以下の章句がもとになっています。
『信者の女たちに言ってやるがいい。‥外に表れているもののほかは、かの女たちの美(や飾り)を目立たせてはならない。』(24:31)
不特定多数の男性に自分の美をアピールするのは、男性を性的に誘惑することになるからです。
この文言のあと、見せてもいい相手として、次の人たちをあげています。
・夫、父、息子、叔父、甥など(これを「マフラム」と言います)
・同性の友人
・同性の客人
・その他同性である女性たち
公共の場での化粧は?
「公共の場であっても、節度ある化粧なら「許容範囲」と書きましたが、これは学者間で意見が分かれています。伝統的に「禁止」が多数派ですが、「節度ある化粧なら許される」という学者もいます。
エジプトのファトワー*委員会(Dar al-Fatwa al-Misriya)内にも、「派手な化粧はハラームだが、イスラーム的人格と礼儀作法をわきまえ、ヒジャーブを着用するムスリマが、薄い化粧をすることは合法である」という見解を示している委員もいます。
(「ファトワー*」とは、一般の人の質問にイスラム法学者が答える宗教的見解のこと。)
「公共の場でも節度ある化粧なら許される」の根拠
先の「節度ある化粧なら許される」の根拠は次の3つです。
①イスラムでは身だしなみを大切にしている
コーランにはこうあります。
『言ってやるがいい、アッラーがせっかく奴隷たち(信徒たちを指す)のために作って下さった装身具を禁止したり、おいしい食べものを禁止したりしたのは誰だ?」』(7:32)
このように身を飾ることは禁止ではありません。さらに、この前にはこう書いてあります。
『いずこの礼拝所でも、祈るときは、きれいに身を飾って来い』(7:31)
②手と顔は見せても良いとされている。
『信者の女たちに言ってやるがいい。‥外に表れているもののほかは、かの女たちの美(や飾り)を目立たせてはならない。』(24:31)
「外に表れているもの」とは、一般的に「手と顔」と理解されています。ですから「手と顔」は一般男性にも見せることが許されています。
③クフルやヘンナは許されている。
クフルはアンチモン化合物で、古代から化粧品として用いられ、ハディースの中にも登場します。女性が美しさのためにクフルをしても問題ないことは、学者間で見解が一致しています。
これら①〜③の理由から、「軽い化粧に問題はない」と、現代のイスラム法学者の一部は考えています。
日本に暮らすイスラム女性の場合
「日本に暮らすイスラム女性」は、化粧についてどう考えたらいいのでしょう?
日本では外で化粧をする女性が多数派です。そんな中で、いつもノーメークでいるのは非現実的な場合もあるでしょう。働いている場合に、取引先へノーメークで出かけるのは、日本の慣習に照らしても好ましくないかもしれません。
なるべくイスラム的なファッションを心がけつつも、純粋に美しく着飾りたいと思う女性もいるでしょう。
そんな場合に、一部の学者の見解に沿って、節度のある着飾りをすることは本人の自由であり、最終的には本人が審判の日に責任を持つことになります。
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