イスラム女性は肌を見せない。夏でも長袖長ズボン、体のラインが見えないゆったりとした服装をしている。出しているのは顔と手だけ。イスラムの戒律がゆるやかなチュニジアなどでは、都市部にこそタンクトップ姿の女性を見かけたりするが、こういうのは例外だ。
こんな場所では、「郷に入って郷に従え」で、現地の人と同じような服装をするのが無難だ。半袖を着ていた友人(女性)は、地下鉄の中で触られたことがある。ふだん女性の肌を見慣れない男性にとっては、十分に刺激的だ。半ズボンやタンクトップなどで歩いていたら、日本で女性が下着姿で歩いているのと同じくらいのインパクトがある。できればお尻までかくれる長そでシャツ、足の先が見えないだぼだぼなズボン、 くるぶしまで隠れるロングスカート。そんな一見野暮ったい服装がベターだ。
イスラムの女性はほとんど一人旅しない。これは一つにはイスラムの男女観からきている。男は女に誘惑されやすく、女性はそんな男性の餌食になりやすい、か弱く宝物のような存在。だから女性は男性家族に守られて旅するのが良いというもの。そんな中、女性が海外から来て一人旅していること自体が目立つ。特に男性にジロジロ見られたり声をかけられやすい。これをもってアラブの男はスケベだというのは、ややちがう。一人旅女性がほぼ皆無な環境で外人女性が一人でフラフラしていたら、興味を持たれるのは当たり前。男性に守られて旅をするのがあるべき女性という価値観の中、そこから逸脱している女性は「きちんとした育ちをしていない女性」と思われる可能性もある。さらに肌を露出していたらアバンチュール目的ともとられかねず、「この女には何をやってもOK」みたいに考える男性も出てきたりする。体の線や肌を見せない服装は、イスラムの国を安全に快適に旅するパスポートみたいなものだ。
気候上の点からも、肌を露出しない服は理にかなっている。中東は日射しが強い。長袖なら日に焼けず、肌が直射日光にさらされないために、逆に涼しい。砂漠気候は昼は四十度くらいまで上がっても夜は二十度近くまで下がることもしばしば。こういう場所では、ゆったりとした風を通す長袖などがあれば快適。何か羽織るようなものがあった方が良い。スカーフがあれば、寝ぐせの髪が隠せたり防寒具としても使えたりと重宝する。