コーラン日本語訳を読むための予備知識
コーランを詠むにはどうしたらいいですか?何か予備知識は必要ですか?中学生や高校生にも理解できる内容ですか?そんな疑問にわかりやすく答えます。
コーランを読むには予備知識が必要
コーランをいきなり読もうとしても、まず読めません。非常に難しいからです。また内容、構成、表現方法も独特です。ですから事前にある程度の勉強が必要です。
コーランはなぜわかりにいのか?
コーランは難しいと書きましたが、以下がその理由です。
状況説明がない
コーランは全文が「神の言葉」とされ、その発言の状況説明がほとんどありません。そこで理解に苦しむことになります。
ストーリーがない
聖書や小説のように一貫したストーリーはありません。ある内容から突然別の内容になるというのは、しばしばです。
各章は時系列ではない
コーランは全部で114章あり、各章に複数の「節」があります。これらが時代順に並んでいるわけではありません。また1章の中にも様々な内容が入っています。このためどこからよんでも良いということにもなります。
コーランの予備知識:①コーランの内容
「神を信じて日々信仰、善行に励めば、最後の審判を経て天国に入れる」これがおおまかなコーランのテーマです。文章のスタイルは神が語りかけるもの。相手は預言者ムハンマドの場合もあれば、信者、人々全般の場合もあります。
<コーランの内容>
コーランの予備知識:②コーランの構成
・「メッカ期」と「メディナ期」に分かれる
コーランが啓示された時期は、大きく「メッカ期」・「メディナ期」に分けられます。それらで内容や文調が大きく異なります。メッカ期は終末論的で恐ろしい雰囲気。メディナ期は共同体が出来上がってきた頃で、雰囲気はメッカ期よりは明るく前向き。内容は生活の規範を述べたものが多いです。時代はメッカ期が先ですが、コーラン中の配列では(おおむね)「メディナ啓示」→「メッカ啓示」の順になっています。
・章の長さは様々
最長は2章(コーラン全体の12分の1に相当)、最短は108章。長い章は、それぞれの節も長めになっています。コーランの前の方に長い章が配列されています。
・章のタイトル
各章にはタイトルがついています。(例:4章=「女性章」)。タイトルは何かの特徴をとらえたものが多いですが、必ずしも内容と一致するとは限りません。
・重要な章
コーランの中に特に重要と言われる章があります。「36章(ヤーシーン章)」は「コーランの心臓」と呼ばれ、全体の内容の3分の1を含んでいると言われています。
コーランの予備知識:③コーラン独自の表現
・主語
コーランの主語は神。その主語は、「われ」「かれ」「われら」など変わります。同じ章句の中で「われ」と言ったり、「かれ」になったりします。それが、コーランがややこしいとされる理由の1つでもあります。
「かれこそは天から雨をふらせる方である。われは水によってすべての(植物)の芽を吹かせ、青葉を出させ、粒々と実った(穀物の)穂を出させる。
・語りかける相手
預言者ムハンマド、信徒全体、人々全体です。それぞれ以下のように記されています。
・ムハンマド=「汝は~」「預言者よ」
・信徒全体=「汝らは」「信仰する者たちよ」」
・人間一般=「人びとよ」
・「コーラン」を意味する言葉
コーランが色々な言葉で表現されています。
「キターブ(書)」
「クルアーン(誦まレルもの)
「フルカーン(識別するもの)」
「啓示」
「天啓」
「叡智」
「規範」
「秤」
「光り輝くもの」
・「言え~」ではじまる章句
コーラン中には「言え〜」で始まる章句が多々あり、これは何かについての神の回答や反論です。
・商人言葉
コーランが下された当時のメッカは商業都市だったため、商業言葉がたくさん出てきます。イスラムでは商売でもうけることは善とされています。
「アッラーの啓典を読み、礼拝を確立し、われが恵として与えたものから密かにあるいは公然と施す者は、失敗のない商売を願っている(のと同じである)(創造主章29)
この場合の「商売」は信仰のことです。
「アッラーによい貸付をなす者は誰であろうか。かれ(アッラー)はそれを倍にして返し、さらに気前のよい報奨が与えられる。(鉄章11)
「貸付」はコーランに12回登場します。
「その日には、アッラーが当然の報酬をあますところなく支払って下さろう」(24:25)
「最後の審判の日に、天国へ入れてくださるだろう」という意味です。
コーラン日本語訳を読むための入門書
コーラン日本語訳を読むには、まずそのための入門書を読み、「コーランとはどのような書物か」を理解してから読むのがおすすめです。入門書のおすすめはこちらです。
『イスラームとコーラン』
最もやさしいコーラン入門書。「コーランとは何か」「どのような内容は?」等が読みやすく書かれています。
『コーランを知っていますか』
作家・阿刀田高さんの楽しいコーラン紹介の本。ユーモアたっぷり、脱線もしながら、コーランの内容をやさしく紹介しています。
『『クルアーン』語りかけるイスラーム』
上記2冊よりさらに深い内容を知りたい人におすすめです。六信五行など基本的な信仰内容を、コーランの章句と照らし合わせつつ学べます。
『『コーラン』を読む』
イスラム研究の第一人者がコーランの最初の一章を読み解きながら、イスラムとは何かを語った書。コーランが下された当時の風土と生活にまで視点を広げて解説しています。「これ1冊でコーランを読んだのに匹敵する」充実した内容です。
コーラン日本語訳のおすすめ
日本語訳のコーラン(翻訳書)には、以下のものがあります。どれがいいか?そのポイントをご紹介します。
『コーラン(上)(中)(下)』
世界的なイスラム研究者である井筒俊彦氏によるもの。1957年に出版され、今でも版を重ねているロングセラー。文庫本サイズで携帯もしやすい。ただ上・中・下の3冊に分かれているため、やや使いづらさはあります。しかし井筒氏の訳はとても味があり、読み物としてもおすすめです。
『コーラン 〈1〉〈2〉』
節ごと行が分かれていて見やすいです。訳も簡潔で読みやすく、上記井筒氏の本より新しい訳を求める方におすすめです。
『クルアーン やさしい和訳』
1冊にまとめられており、単行本とほぼ同じサイズで利便性が高い。訳もわかりやすいです。
『日亜対訳 クルアーン』
こちらも1冊にまとめられています。中田考氏(イスラム法学者)の訳。ただアラビア語原文を含んでいるために厚さ6cmほどあり、ハードカバーのため重いのが難点。コーラン研究を志す方やアラビア語の原文も読みたい方向けです。
★「イスラム流幸せな生き方」
中学生でもわかるイスラム入門書。なぜ世界中でイスラム教徒が増え続けているか?がわかります。