「潮」古代都市ダマスカス

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潮・シリア

(本文)

 ウマイヤ朝の都として、661年から約100年にわたり繁栄を極めたシリアの首都ダマスカス。その旧市街にあるウマイヤ・モスクは、715年に完成した世界最古のモスクである。イスラム教の重要な聖地の一つとされ、シリア国内はもちろん、周辺のイスラム諸国からも巡礼客が訪れる。   

 ダマスカス滞在中、私は幾度となくこのモスクに足を伸ばした。迷路のように入り組んだ旧市街の路地を散策するのに疲れると、モスクの前の野外カフェに腰を下ろし、一休みする。モスクの周囲でくつろぐ人やモスクに出入りする人びとを眺め、アザーン(礼拝への呼びかけ)に耳を傾けながら、美味しいコーヒーをすするひとときは、至福の時間だ。

 モスクの中庭で憩う人びとを眺めるのもまた楽しい。休日にはさらに大勢の人が訪れる。写真を撮り合う夫婦もいれば、腰を下ろして談笑する家族連れ、子どもが遊び回るのを目を細めて眺める両親の姿もある。そのような光景を眺めていると、ここが祈りの場であるとともに、人びとが集い、安らぐ場所であり、また宗教が人びとの生活に深く根付いていることを感じさせられる。

  昼間の強い日差しがやわらぐ夕暮れ時になると、モスクはライトアップされ、昼とはまた違った美しい姿を見せる。やがて夜が近づき、人影がまばらになるに頃、千年以上の歴史を持つこのモスクは、静かな闇につつまれていく

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