フンザ(パキスタン)の結婚式*高学歴なイスマイリ派女性の場合
日本でも「長寿の里」、「桃源郷」などで知られるパキスタンのフンザ。そのフンザで結婚式に参加しました。
新郎新婦の出会いはお見合いです。フンザの人々はイスマイリ派というシーア派の一派。女性の学歴が高く、大学院まで出ている人も少なくありません。しかし恋愛結婚する男女はほぼ皆無だとか。
同行してくれた現地で長く民族調査をしている日本女性が、ぽろっと呟きました。「ここの女のひとって、親が決めた相手と淡々と結婚していくのよね。好きになった相手と大恋愛の末に結婚するとかではなく。そういうの、楽しいのかしら?」
果たしてどうなのか?結論は最後に述べるとして、結婚式の流れをご紹介します。
新郎の村でのパーティ
結婚式の始まりは、まず新郎の暮らす「シスーニー村」からです。時期は夏でしたが、この日は小雨が降る肌寒い日。ダウンジャケットを着込んで村に向かいました。
新郎の実家で、村人全体が集まってのダンスパーティが行われます。
踊るのは主に男性。そんな中、小さな女の子も飛び入り参加。華麗な踊りに目が奪われます。右にいるのが新郎です。
新婦の村パスーへ
新郎の自宅でのパーティが終わると、村の代表者たちが揃って花嫁の住む村パスーに向かいます。
パスー村では、村の女性たちが花の首飾りを持って、シスーニー村の人たちを出迎えます。
なんと驚いたことに、女性たちが他の村の男性たちの手にキスをしています。こういうのは戒律がゆるいフンザならでは、でしょう。
男性たちは村の中心部の集会所に集合。2つの村の男性たちがそろって挨拶を行います。その後、新郎と新婦は村のモスクで結婚契約の儀式を行います。(その場には、新郎新婦の肉親しか立ち会えません)
屋外のダンスパーティ
結婚契約の儀式が終わると、村の広場でダンスパーティが行われます。踊るのは主に男性で、両方の村の男性すべてが参加します。
花嫁の実家での昼食会
ダンスパーティの後は、花嫁の実家での昼食会です。
花嫁の手に描かれたヘナ(染料)。おめでたい時に描きます。
ふたたび新郎の村へ
昼食会が終わると、新婦の村の代表者たちが新郎の村へ向かいます。
これから新郎の村へ移動する花嫁。親族に涙で別れを惜しみます。
シスーニー村でも、同じようにダンスパーティが行われます。
夕食を用意する男性たち。バターと小麦粉をまぜた「バート」という料理です。
シスーニー村の楽団。フンザのどの村にも、必ず楽団がいるそうです。
夕食会
この日の夕食です。先ほどのバートの上にパンが置かれます。
結婚に過剰な夢を抱かないフンザの結婚
「ここの女性って、淡々と結婚していくのよね。結婚にあまり夢を抱かないみたい」。先の女性の発言です。
フンザはイスラムの戒律が緩やかなことで知られていますが、多くの結婚は親が決めた見合い結婚です。ここで紹介したカップルもそう。恋愛結婚が当たり前となった今の日本人からみると、(楽しいのか?)と思わないでもありません。
しかし、見合いには恋愛結婚にないメリットもあるようです。見合いは過剰な夢や期待を描かないからこそ、失望もそれほどない。淡々と結婚し、淡々と2人で幸せな慎ましい生活を築いていく。今の日本人が忘れた素朴な幸せを、このフンザの結婚式は思い出させてくれました。
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