イスラマバードの聖者廟*民衆の熱気に満ちた場所
イスラマバードの2つの聖者廟を訪れました。ゴーラ・シャリフ廟 Darbar Golra Sharifとイマーム・バリ廟Darbar Imam Baliです。
イスラムの聖者廟とは
聖者廟とは聖者を祀った廟(墓をおさめた建物)のことです。聖者とは、預言者ムハンマドの子孫や有名なスーフィー(イスラム神秘主義者)、イスラム学者など人々から尊敬を集めた人物のこと。
イスラムでは神以外を崇拝するのは禁止です(→「イスラムで禁止されていることは?」)。しかし実際には聖者を崇拝し、その墓に参詣することはイスラム圏全域で盛んに行われています(例外はサウジアラビア)。
パキスタンも同様で、特にムルタンには多くの聖者廟が残っています。人々は聖者に願いをかなえてもらいたいと、聖者廟を訪れます。
なぜ人々は聖者に願い事をするのか?イスラムの1日5回の礼拝は神に感謝を伝えるものであって、願いごとをするものではありません。でも私たちには様々な願い事があります。「病気を治してほしい」とか「子どもを授かりたい」とか。
そういったお願いや祈りを誰かに聞いてもらいたい、かなえてもらいたい。神にとりなしてもらいたい。その対象として、神よりも身近な存在である聖者が求められてきたのです。
またモスクは主に男性が礼拝する場所(女性の礼拝場所は男性より小さなスペース)です。しかし聖者廟では女性も男性と同じように祈りをささげることができる。
こうして多くの女性が聖者廟を訪れます。実際、イスラマバードの聖者廟にも、男性と同じかそれ以上の女性の姿がありました。
モスクもイスラム建築として美しく見応えあるのですが、聖者廟は加えて人々の熱気、人間臭さみたいなものが濃厚に感じられます。モスクは私にとって神と出会う場所、聖者廟は民衆と出会う場所です。
ゴーラ・シャリフ廟 Darbar Golra Sharif
イスラマバードで最も重要な聖者廟だけあり、かなり大きく立派な建物です。この地方の有名なスーフィー聖人、ピル・サイード・メフル・アリ・シャー・ギラニを祀るもので、「メヘル・アリ・シャーMEHAR ALI」の名で知られ、毎年何千人もの信者が集まります。
一説によれば、この聖者廟からパキスタンにイスラムが広がっていったそうです。ちなみにスンニー派です。
この建物の中には、聖者とともに、その子孫などの墓が祀られていました。女性の聖者が祭られている部屋では、女性が一新にコーランを読んだりお祈りをしたりしています。
廟に来ていた家族。パクパターンPakpattanという町のババフリードの聖者廟Shrine of Baba Faridの近くから来たそうです。
以前この村はサトウキビの生産が盛んでしたが、干ばつで生産が減ってしまった。そこでババフリードの母親が祈りを捧げたところ、雨が降った。こうしてババフリードの聖者廟が建設されたということです。
ゴーラ・シャリフ廟では、毎日、無料で食事を提供しています。1日に焼くチャーパティー(インドなどで食べられている無発酵の平たいパン)は800~900枚。木曜・金曜・日曜は肉料理も出るそうです。
チャイ(ミルクティー)を作るために牛も飼っていて、毎日16時に乳搾りをするそうです。
私たちも食事をいただきました。ダル(右の豆のスープ)は、まろやかな味でした。
建物の中には寄宿舎もあり、誰でも2晩まで無料で宿泊が可能。部屋は男女別で、トイレ・シャワーが付いています。(ホットシャワー)。異教徒でも宿泊は可能です。
聖者の子孫という男性とともに、ドアー(祈り)をささげる友人。
場所:
イマーム・バリ廟 Darbar Imam Bali(Shrine Of Hazrat Bari Imam Sarkar)
こちらも有名な聖者廟です。廟の周囲は門前町のような賑わいでした。
聖者の墓にひれふす参詣者たち。
ここでも毎日無料で食事を提供しており、入口の左手に食事を出すスペースがあります。この日の食事はビリヤニ(米と豆の炊き込みごはん)です。参詣者は持参した袋に入れてもらいます。
入り口付近では寄付を集める人がいます。お金を渡すと、それに見合った食事を貧しい人に与えることができるのです(それによって、神からのご加護があるとイスラムでは信じられています)。
給仕する様子を見ていたら、係の男性が「給料がないから(少ないから)お金をくれ」と。
「でもこういう仕事をしている人は、神からのご利益がもらえる仕事なんだから(本来他人に施しを期待するのは間違っている)」と友人。
この聖者廟にも複数の墓があり、メインの墓?以外にも大勢の参詣者がいました。友人によれば、「人によって得意分野があるんじゃない?病気を治すのが得意な聖者とか、お金儲けが得意な聖者とか」とのことでした。なるほど。