ムルタンMultan観光(パキスタン)*聖者廟・モスク・ホテル情報
パキスタンの中心部にあるムルタン(Multan)。古くから交通の要衝として栄え、イスラム信仰の中心ともなってきました。今も多くの聖者廟(ダルガー)が残っています。
ムルタンとスーフィズム、聖廟(ダルガー)
ムルターンはパンジャーブ州のちょうど真ん中あたりに位置する古都。南アジアの中でも最古の歴史を誇る町で、インダス文明が栄えたモエンジョ・ダロやハラッパーなどの都市遺跡と同年代につくられたことがわかっています。
712年にイスラム勢力により町は支配され、以降は政治と学問の中心として発展してきました。
その中世の時代に興隆したのがスーフィズム(イスラム神秘主義)です。スーフィーとは、神と人間との神秘的な合一を目指す求道者のこと。禁欲的な修行により自我の欲や意識をおさえ、ひたすら神に近づき、イスラムを理解しようとします。
こうした禁欲的な苦行を実践する人たちは徳が高いとして、民衆からは尊敬されていました。
高名なスーフィーが亡くなると墓がつくられ、墓は整備されて、聖廟となります。これがダルガーと呼ばれ、熱心な信者たちの参詣の場となっていきました。
徳が高かったスーフィーのダルガーほど神通力が大きいと考えられ、参詣者は「子どもが授かりますように」とか「病気が治りますように」などと現世利益を求めて祈願するのです。
ムルターンにはスーフィズムが興った時代につくられたダルガーが数多く残っている。
人なつこいムルターンの人々
ムルタンで印象的だったのは、人々の人なつこさと温かさ(男性も女性も)。ラホールやイスラマバード、ペシャワールなどとは、また一味違う感じです。
たとえば路上の屋台でビリヤニを食べていたら、「これからどこに行きますか?」と男子学生が話しかけてきて、「〇〇へは〇番のバスで行けますよ」と言うついでにビリヤニ代を払ってくれたり。
霊廟では見知らぬ男性から「昨日知り合ったマレーシア人男性と今夜食事するので、ご一緒しませんか」といきなり食事のお誘いを受けたり。
公園に行けば、老若男女が寄ってきて「セルフィーいっしょにいいですか?」‥。
ただ残念なことに、ムルタンは(2023年現在)外国人が宿泊できるホテルが限られていて、観光には警察の護衛が必要です。
ムルタンの見どころやホテルをご紹介します。
シャー・ルクネ・アーラム霊廟 Tomb Shah Rukn e Alam
13世紀のスーフィー聖者、シャー・ルクヌッディーンの廟(墓)です。「シャー・ルクネ・アーラム」とは「世界の柱」の意味。
シャー・ルクヌッディーンは、イスラムを広めた聖者の中で一番有名な人だそうです。
<場所>
バハー・ウル・ハック霊廟 Tomb of Baha-al-Haq
シャー・ルクヌッディーンの父の墓廟で、こちらもイスラム布教に貢献した偉大な聖者です。13世紀にモンゴルの略奪団がムルターンにやって来た時、彼らを説きふせて無差別虐待をやめさせたという逸話も残されています。
聖者廟は2階建てで、2階部分は8角形、1階部分は正方形です。
<場所>
カシム公園 Qasim Bagh
上記2つのダルガーの近くにある公園。ここはダルガー以上に楽しい場所でした。行く先々で「一緒にセルフィーいいですか?」と求められ、そのたびにスマホのカメラに向かってニコッをくりかえす私。(ふだん人の写真はたくさん撮っていますが、撮られるのには慣れていません)
ムルタンではペシャワールのように女性は写真にも抵抗がなく。パキスタンは地域によってずいぶん人々のようすが違います。
<場所>
イドガー・モスク Eidgah Mosque
ブルーのタイルが印象的な、ムルタンでもっとも有名なモスク。1735年建造。毎週金曜日の午後にはイスラムについての説話会が開かれ、大勢の男性が集まります。(そのため女性はこの時間に見学できません)。
モスクの外壁には、パキスタンの他のモスクと同様、綺麗な花が描かれています。
<場所>
ジェイン・マンディール Jain Mandir Multan(Jaine temple)
個人的にはもっとも興味深い場所でした。かつてのヒンドゥー教の寺院をコーラン学校に転用したものです。
チョークバザール(chock bazar)のボハール門(bohar gate)の近くにあります。
<場所>
ワリ・ムハンマドモスク Ali Wali Muhammad Khan Masjid
外壁の装飾が色鮮やかで美しいモスクです。1753年、当時の統治者であるアリ・ムハンマド・カーンAli Muhammad Khan Khaugani (or Khakwani)によって建てられました。
<場所>
ジャミア・カイルール神学校 Jamia Khairul Madaris
パキスタン全土の中心的存在のマドラサ(コーラン学校)です。1931年にインドのパンジャブ州の町ジャランダールJalandharで建てられ、1947年インドとパキスタンの分離によって、ここに移転されました。
パキスタンではマドラサは学費も宿泊費もすべて無料です。
<場所>
クダカ・モスク Khuddaka Mosque
1873年に建てられた、こじんまりとしたモスク。内部にメッカとメディナの町の地図が手書きで描かれています。
<場所>
アフマド・スイーツ Ahmed sweets
観光名所ではありませんが、地元で有名なサモサやスイーツのお店です。
サモサ(サモーサー)は南インドの代表的な軽食。小麦粉を練った生地に、いためたジャガイモやグリーンピースなどの具を包み、四面体にまとめて揚げたものです。
パキスタンでは(インドと違い)サモサに、甘辛いソースをかけて食べるのが一般的。(サモサ自体はインドの方がおいしいかもです)。
<場所>
ムルタンのホテル
ムルタンで外国人が宿泊できるホテルです。(他にもあるかもしれません)。
【Hotel Multan Continental】
奥の広めの部屋。一泊5000ルピー(約2500円)でした。
【Hotel DE Shalimar】
最初これよりも狭い部屋に通されたのですが、向かいにあるこちらの部屋に変えていただきました(料金は同一)。パキスタン人は親切な方が多いので、希望があれば言ってみるべき。一泊5000ルピーでした。
ムルタンでの警察の護衛
ムルタンでは2023年11月現在、観光には警察の護衛(同行)が必要です(基本的に)。ただ、これは厳密な決まりかというと、そうでもないようです。
私がムルタンに滞在した初日は金曜日。ホテルにチェックインして警察が来るのを待つあいだ、1時間以上も時間があったため、ホテルの近所という条件で、1人で食事に行くことが許されました。
その後ホテルに電話をして警察が来たか聞くと、「今日は金曜日だから(金曜日の昼の礼拝は、イスラム教徒にとってもっとも大切なもの)いつになるかわからない」ということで、一人で観光しても良いことになったのです。
2日目は現地で知り合ったパキスタン青年に、彼の家にステイしていたマレーシア人男性とともに町を案内してもらいました。パキスタン人が一緒のためか、警察の同行なしで大丈夫でした。
このように「警察の護衛が必要」のルールは終始一貫しているわけでもないようで。
ムルタンに行かれる方は、あらかじめSNSなどでムルタン在住のパキスタン人と友だちになっておくのが良いかもしれません。