イスラムにおける母性の尊重
アラブ社会では、未婚時こそ女性は不自由な思いもしますが、結婚して子どもを産むと俄然立場が強くなる。「未婚・既婚で大違い!アラブ社会(女性)を理解するポイント」で書いた通りです。だから女性たちは早く母になりたがります。
コーランやハディースの母性尊重
「母親を大事にしなさい。来世の楽園は彼女の足下にある」(ナサーイーのハディース)
「(教友の一人が)「私がいちばん大切につきあうべき人はだれでしょうか」と尋ねると、預言者は答えた。「あなたの母である」「その次は?」と尋ねると「あなたの母である」と答えた。「その次は?」と尋ねると「あなたの母である」と答えた。さらに「その次は?」と尋ねると「あなたの父である」と答えた。」」(ムスリムとブハーリーのハディース)
「女性によって人類(ムスリム)が繁栄する」という認識があるからでしょう。
授乳面でも配慮あり
授乳面でも女性をいたわっています。
「母親が子育てで苦労することがあってはならない。赤ん坊にお乳をあげたくない場合、乳母を探さなければならない」(2:233)
なぜなら妊娠・出産・そして子育ては大変な重労働だからです。
『なんと言っても母親は自分を腹に宿したあいだ苦労に苦労を重ねて身をやすし、その上、乳離れさせるまでに二年間もかかっている』(31:14)
授乳期間は2年が理想とされています。
母でなければ天国へ行けない?
「楽園は母の足下にある」ということは、母でなければ天国に入れないのか?決してそんなことはありません。人間の価値を決めるのは信仰心だけ。子のいない女性が人間的に劣るわけでは決してありません。
コーランでは、子どもの多さを誇る人を戒めています。
「あなた方をわれら(神)に近づけるのは、財産でも子供でもありません。信仰して善行に勤しむ人には、かれらが行ったことの神の報奨があり、かれらは安全な天国に高殿に住むのです。」(34:37)
アラブ社会では子作りが重視されるため、母親になれなかった女性は肩身が狭い思いをします。イスラムでは一夫多妻が認められているため、夫が2番目の妻を娶る可能性もある。しかしコーランやハディースの本意は、あくまで母性の尊重であり、人間的な上下があるとしたら信仰心のみです。子供を産めない女性が引け目を感じる必要も理由はないし、実際、子どもがいなくても仲良く暮らしている夫婦はたくさんいます。
人の本当の幸せとは、お金や子供がたくさんあることではなく、いつも正しい行いをし、心やすらかな気持ちでいることなのです。(*イスラムの幸せとは?)
20年間の取材によるイスラム女性たちのリアルな日常を紹介。モロッコ、チュニジア、エジプト、イラン、パキスタン、モルディブ‥‥。歌あり踊りありデートあり。「抑圧」などメディアによって作られたイメージと違う、生き生きした女性たちの実像を紹介します。
★「イスラム流幸せな生き方」
中学生でもわかるイスラム入門書。世界でなぜイスラム教徒が増え続けているか?がわかります。
コメントを残す