サウジアラビアを女性一人旅して驚いたこと
「金満国家」。サウジアラビアについては行くまで良い印象はもっていなかったのですが、それが良い意味で覆されました。
アブハーのサンドイッチ店で
1つ目のできごと。南部のアブハーという町でサンドイッチ屋に入った時のことです。この店では自分の好みの具(ツナやチキンやタマゴなど)を店員に伝え、パンに挟んで作ってもらい、持ち帰ります。
店に入ると、先客の若い男性がいました。その彼がサンドイッチを店員から受け取り、会計をする時のこと。「これ、彼女のぶん」と私の分も払っているのです。
私と彼とは1言も口をきいていないのに。しかも私が店に入ってから1分もたたない間の出来事です。
見ず知らずの人が私の分の代金をはらってくれるという経験は、イスラム圏では多々あります。カフェに入ってお茶を飲み、会計しようとすると、「あの人が払っておいてくれたよ」とか。
払ってくれた人は、見ず知らずの人。その人とは店で一言も話をしていないこともあります。
「旅人に親切にせよ」という教えがイスラムにはあるのです。そのためもあるのでしょうか?
それはともかく今回の出来事と、その多々あるイスラム圏での経験との違いは、今回があまりにも「一瞬」だったことです。
彼の頭の中でわずか2、3秒のうちに「あ、外国人だ→彼女の分も払ってあげよう」という機転が働いたというのは、驚くべきことです。
ジェッダで道に迷って
2つ目の体験はジェッダです。ジェッダは紅海沿岸のサウジアラビアで最も開放的といわれる町。ここでデザイナーとして働く友人のサウジ女性のオフィスを訪ねた時のこと。
近くまでタクシーで行き、そこから歩いてオフィスを探しました。しかし道に迷ってしまい、たまたま通りかかった若者に住所を見せると案内してくれることになりました。
その時、向こうから40歳ぐらいの男性が近づいてきたのです。そして何やら若者に話しかけました。
すると若者は自分のポケットから紙幣を取り出し、その男性に渡したのです。事情はわかりませんが、お金に困っていて、それを若者に訴えたのでしょう。もちろん2人は全くの他人です。
初対面の相手にいきなり「お金をくれ」と言われ、渡してしまうのにもびっくりしましたし、見ず知らずの若者に「お金くれ」と言う行動にも驚きました。
男性はイエメンから内戦を逃れてきた人なのかもしれません。が、本当に困窮しているどうかは、確かめるすべがありません。
何より驚いたのは、施しを要求した男性が、オフィス街を歩いている他のサウジ人と見分けがつかないような、こぎれいな格好をしていたのです。
そしてこうやって何人かのビジネスマンに声をかけていれば、かなりの金額が稼げるのではないでしょうか。
「貧しい人に施しせよ」
「貧しい人には施せ」もイスラムの教えで、これまで色々な場所で施しのシーンを見てきました。
エジプトでは、食堂に物乞いがやってきて、店主が料理を渡している場面をしばしば目撃します。
パキスタンでは無料の食事配布サービスをやっている食堂も多く、食事時には店の前に行列ができます。
しかし道で会った人に、いきなり「お金くれ」という場面は、初めて体験しました。
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サウジでは、結婚式の時などに余った食事を貧しい人に配るNGOもあるそうです。
イスラム圏はどこでも結婚式は人生の一大イベント。招待客は膨大で、そして結婚式は誰でもウェルカムなことも多く、人数があらかじめ把握できないこともしばしばです。
そのため主催側は、残すのを見込んで大量の食事を用意します。そしてNGOに連絡をしておくのです。
宴が終わる頃にNGOスタッフが式場に到着し、余った食事をトラックに載せ、貧しい人たちに配って回ります。
資源、食材の有効活用という意味では、なかなか良いシステムですね。
コロナ状況下で今は衛生状況が気になりはしますが、日本にもこういうのがあってもいいかなと思ったりします。