シベルート島メンタワイ族の食事*ジャングルの恵み
シベルート島のジャングルに住むメンタワイ族は、ふだんどんなものを食べているのか? メンタワイ族は農耕民で、色々な作物を育てていると書きましたが、もちろんジャングルの野生の植物もうまく食生活に取り入れています。
主食*サゴ
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ふるいで細かくしたサゴ粉を竹筒に入れる。
メンタワイ族の一番の主食はサゴ。サゴヤシの茎からつくる小麦粉です。
サゴ粉の作り方は、まず高さ10mほどに成長したサゴヤシを伐採し、硬い樹皮をナタではがして、中の柔らかい芯を取り出します。これを大きな木製のやすりですりおろす。それを水でろ過し、でんぷんを抽出。乾かして粉状にしたのがサゴ粉です。ヤシの木を植えてからサゴ粉を作るまでは男性の仕事です。
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サゴ粉をふるいに通して細かくする。
サゴ粉はかなりまとまった量を一度につくり、それを数ヶ月保存して、毎日少しずつ食べます。料理する時は、まず独特のふるいにかけて、粉を細かくします(上の写真)。
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サゴ椰子の葉に包んだサゴを焼いているところ。
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竹の中に入れて蒸し焼きにしたサゴ。竹を割って食べる。
サゴの料理法には2つあり、竹筒に入れて蒸し焼きにしたもの(上)と、サゴの葉で包み、火であぶるもの。(下)
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サゴをサゴヤシの葉で包み、長さ30cmほどの棒状にしたものを火であぶる。食べ終わった葉っぱは床下に捨てる。
主食*タロ
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タロは鍋に入れて水がかぶるくらい入れてゆでる。
もう1つの主要な食べ物がタロ(タロイモの根)。やつがしらとサトイモを足して2で分ったような味。タロはざくぎりにしてゆでて食べます。塩をつけて食べるとおいしい!でもメンタワイの人たちは塩をつけることはありません。塩はどちらかというと貴重品なのです。
主食*バナナ
バナナもどちらかというと主食です。毎日のように食べます。これもほとんどゆでて食べます。
こちらはバナナの別バージョン。生のバナナをすってまるめてだんご状にし、熱したココナツミルクの中に入れてゆでたもの。すいとんを甘くした感じ。主に朝食で食べます。
ゆでたタロとバナナをつぶしてまるめ、すりおろしたココナツの実をまぶして、竹の中に入れて蒸し焼きにしたもの。ほんのりとした甘みがあって美味しい。家族は「クッペ」と呼んでいました。主食なのか、おかずなのか、お菓子なのか、微妙な位置付けです。
バナナの実
収穫したバナナの実の皮をとっているところ。バナナの実は炒めて食べます。
皮をとったバナナの実は、短冊切りにします。まな板などは使いません。
チョベという小さな石臼で、味付けのための唐辛子、にんにくなどをつぶし、ペースト状にします。これらをまず鍋で炒めて、そこに刻んだバナナの実を入れた後、ココナツミルクを加えて煮込みます。
これがココナツミルク。ココナツの実をすりおろし、水を加えると、こんなふうに白濁します。
できあがりはこんな感じ。スパイスとココナツミルクがうまくとけあって、何とも言えない味。
野生植物の炒め物
ピキスという野生の植物。これを炒めて食べます。メンタワイ族はジャングルでたくさんの植物を育てていると書きましたが、これは野生の植物です。
これも味付けは主に唐辛子。先のチョベでつぶしてペースト状にします。
出来上がったピキス炒め。ごはんによく合います。
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ジャングルで取ってきたタロの茎を刻んでいるリリとカンポンおばさん。
そのほか、野菜料理としては、タロイモの茎をきざんで、先のバナナの実と同じように香辛料で煮込んで食べます。
こちらが、タロの茎の料理。
花の煮込み
ジャングルには(名前は忘れましたが)野生の花が咲いており、それを採って料理に使います。
ナタで刻んで細かく。
川の石ころについている小さな貝をとって、
花といっしょに煮込んだスープ。貝の出汁がきいてます。ピンなどで中身をつまんで食べます。
メンタワイがトトナンと呼ぶ、ジャングルに生えている果物。ジャングルに行くたびに、リリがよく取って食べさせてくれた。
これが皮をむいたもの。とても酸っぱい!
ココナツの多様な用途
サゴ、タロ、バナナに加えてほぼ毎日食べるのがココナツ。すって料理に使うことが多いです。表面がギザギザになった独特の木の枝を使ってすります。ニワトリの餌も、すりおろしたココナツです。
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真ん中が牛肉、その両隣にあるのが、ココナツをまぶしたサゴ。
すりおろしたココナツはジュースをとって煮込み料理に使うほか、サゴにまぶして食べることも。サゴは正直、日本人にとってあまり美味しいものではありませんが、ココナツをまぶすと甘みが増して、たくさん食べられました。
大好物*サゴカブトムシ幼虫
メンタワイ族の大好物が、タムラというサゴカブトムシの幼虫です。サゴヤシの木を切り倒して放置しておくと、幹の中にカブトムシが卵を産み落とし、それが成長します。
炭火で焼いたものは、意外に美味です。でもまだ生きていて、もじもじ動いているヤツは、どうしても食べることができませんでした。