シベルート島メンタワイ族と暮らした1週間④*メンタワイ族は農耕民
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庭に生えているタピオカの葉を集めるバイ・マジャ。
メンタワイ族のウマに来て4日目の朝。今日も5時半くらいから、奥の炉でバイ・サりとバイ・マジャがサゴを焼いています。
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その後、バイ・マジャは庭に出て、タピオカの葉を収穫。それで塩味のおひたしをつくりました。
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タピオカの葉の塩茹で。牛肉ばかりだったので、野菜が食べれるのが嬉しい。
サゴとタピオカ葉のおひたし。これが朝食?と思いきや、やはりその後タロ、バナナ、牛肉、サゴの食事をいただきました。(まだ牛肉があるのか‥)と正直びっくり。私が来てから連続4日間牛肉をいただいています。ウマには冷蔵庫などありませんから、何度も何度も肉を温め直して食べているのです。
ジャングルにタロをとりに
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帰りに「ジャンブ」という果物をとって、食べさせてくれるリリ姉さん。
この日はリリ姉さんとジャングルへ、タロイモをとりに出かけます。私たちが出かける気配を察知し、犬がすかさずついてくる。1匹のこともあれば2匹のこともあります。
リリ姉さんは、まずは私が歩きやすいよう、竹で杖を作ってくれました。ジャングルの地面はぬかるんでいて足を取られやすいので、これがあるととても助かります。きっと私のことが危なっかしくて、見ていられないのでしょう。
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手前が収穫したタロイモ。イモだけでなく、茎の部分も油で炒めて食べる。
タロ畑はウマから歩いて10分くらいの場所にありました。水をはった畑です。タロはサゴに次ぐメンタワイ族の第2の主食。やつがしらとサトイモを足して2で分ったような味で、塩をつけて食べるとおいしい!(でもメンタワイの人たちは塩をつけることはあまりなく、そのまま食べます)。
刺すような日差しの中、リリ姉さんは農作業用のズボンに履き替え、膝の上まで水に浸かりながらタロを取る。私はただ見ているだけで、申し訳ない気持ちになってきます。
メンタワイは農耕民
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ココナツの実を割ってジュースを取り出すアマン・マジャ。
意外だったのは、メンタワイ族はかなりの程度、農耕民だということです。狩猟より農耕の比重の方が大きい。狩にも行きますが頻繁ではなく、おそらく月に1回程度です。
以前はジャングルにたくさんの野生のサルやシカがいたそうですが、たくさんとりすぎてしまい、今は遠くに行かないと見つけられない。そのせいもあるのでしょう。
ふだんは男性がふらっと鳥などを獲りに行くくらいです。その鳥はほとんどの場合、お母さんが食べるためのもの。
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収穫してきたバナナを枝から切り下ろす。バナナは毎日の食卓に登場。果物というより主食に近い。メンテナンスがそれほど必要なく、かなり長期にわたって実をつけてくれる貴重な食べ物。
狩にはそれほど行かない代わり、周囲のジャングルを広範囲に利用して様々な植物を育てています。朝食べたタピオカも植えたもの。タロ畑も何箇所かにあります。
他にもサゴヤシ、バナナ、ココナツ、サトウキビ、ジャックフルーツ、パパイヤ、ランブータン‥。そしてなんと私の大好物ドリアンも!ちょうどシーズンが終わってしまったところだそう。ああ、もうちょっと早く来ていればなあ。
いってみればジャングルが広大な食料貯蔵庫のようなもの。行けば何かしら食べ物がある。ただしそれらの多くは、自分たちで植えたものです。でも一度植えれば、水やりなどメンテナンスはほとんど必要ない。高温多湿の気候のため、ほっておいてもどんどん育つからです。うらやましい。
貴重な家畜*ニワトリとブタ
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飼っているニワトリにココナツをすったエサをやるバイ・マジャ。
動物はブタとニワトリを飼っていますが、ふだん食べることはまずありません。これらは主に儀式の時の生贄(いけにえ)用で、大規模な儀式では何十羽ものニワトリが犠牲に捧げられます。タマゴも食べません。あくまでヒナを得るためのものです。
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ニワトリは日中は自由に外を歩き回り、夜はカゴに入れられる。
ニワトリはウマの近くと、川の対岸で飼われていて、ウマの近くはバイ・マジャが、対岸のニワトリはサラ姉さんとリリ姉さんが世話をしています。
日中、ニワトリは自由に歩き回って自分の食べ物を探し、日が暮れる前に籐のバスケットに閉じ込められます。すりおろしたサゴとココナッツが与えられます。
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ヒナがかえった後のタマゴの殻をまとめて枝に差し、それを近くの木に縛りつけるリリ姉さん。ヒナたちがよく育つようにとのおまじない。
ニワトリ以上に大事な家畜はブタです。この家族の場合、ブタたちはウマの近くではなく、別の場所に飼われていて、そこでは妹夫婦が世話をしています。
ブタはニワトリ以上に貴重な財産で、いわばメンタワイ族の最強の通貨です。結婚式などのお祝いや儀式で生贄にされるほか、結婚の際の結納金みたいな役割も果たしたり、ブタと交換で土地などを買ったりもします。
男女の役割分担
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ジャングルの中でナタを手に枯れ木を集めるバイ・マジャ。きゃしゃな体に似合わず、とてもエネルギッシュ。
ジャングルでは男女の役割分担が明確です。竹や薪などの調達、動物の世話、料理は女の仕事。男たちは時々ジャングルの中に入って行って鳥を取ったり、ウマやその周囲のメンテナンスなどをしています。そのほかの時間はウマで座ってタバコをふかしているか‥。
男たちは炊事はいっさいしません。だからごくたまに泊まりがけで狩に行く時は、料理をする人が必要なので、奥さんたちもついていきます。
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ジャングルで鳥をしとめてきたアマン・マジャ。母親に食べさせるためのもの。
そのほか男女の役割分担といえば、タロは植え付けから収穫まで女の仕事である一方、サゴは植え付けから小麦粉作りまで男性の仕事です。
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洗った服を干すアマン・サリの娘。子どもたちは自分の服は自分で洗う。
掃除は食事のあと、食べた床をさっとはくくらいで、これは大人も子どもも気づいた人がやっています。ビニール袋などは炉に入れて燃やしてしまう。竹やバナナの皮などはウマの外に捨てるので、ここではゴミ出しはありません。
使った食器は川に持って行って洗いますが、これは大人も子どももやります。子どもたちは自分が着た服は自分で洗濯。
子どもたちは皿洗いも服の洗濯も、やらされているという感じでは決してなく、ごく自然なこととして、こなしているように見えます。
私はウマでは毎日、女性メンバーの誰かとジャングルに入っていました。本当はアマン・サリやアマン・マジャと一緒にジャングルに行って、鳥などをしとめるところが見たかったのですが、彼らは何も言わずにぶらっといなくなってしまう。
もしかしたら、男一人でジャングルに行く方が気楽だと思っているのかも。単なる私の想像ですが。
この日は夜7時くらいに魚、牛肉、米、タロ、ヌードル、チリ、タロなどの晩ごはんをいただきました。ああ、今日も食べすぎてしまった‥。