イスラムとはどんな宗教?*イスラムの教えと特色
イスラムとは何か?どんな宗教か?アッラーとは?コーランとは?などについて、わかりやすく紹介します。
イスラム(イスラーム)とは?
イスラム(イスラーム)とは、「アッラー(神)にすべてをお任せする」という意味です。(「イスラム」は、アラビア語で「帰依する」「従う」を意味します。)
*イスラム・イスラーム・イスラム教?
イスラムに関する知識がヨーロッパ経由で日本に伝わったため、英語の「Islam」から「イスラム」となりました。一方でアラビア語ではaが長母音のため、「イスラーム」と発音します。また「イスラム」という言葉自体が宗教そのものを意味するため、厳密に言えば「教」をつけないのが正しいとされます。ただし「イスラム教」でも間違いではありません。「ムスリム」とはイスラム教徒のことです。
神アッラーとは?
アラビア語で「唯一の神」のこと。全ての存在の創造主であり、全知全能で、偉大な存在。この神にすべてをゆだねるのがイスラム教徒の生き方です。(*神アッラー」99の美名(唯一・全知全能・全ての創造神‥)
コーラン(クルアーン)とは?
イスラムの聖典。アッラーから下された啓示を集めた書物。アラビア語ではクルアーン(意味は「読まれるもの」)」。
神の言葉をそのまま集めたものであり、非常に神聖なものとされています。(*コーランとは?日本人が知らない真実)
*聖典・啓典とは?
まず啓示とは、唯一神アッラーが人間に与えた言葉のことで、これを集めたものを「啓典」と言います。啓典には、コーラン、ユダヤ教の聖典トーラー、詩篇(ザブール)、キリスト教の福音書(インジール)などがあります。聖典(教典)とは宗教の教えの源泉となる書物で、啓典もこれに含まれ、ほかに創唱者の言葉を記した書物なども聖典とされます。ハディース(預言者ムハンマドの言行録)は啓典ではありませんが、聖典とされます。
預言者ムハンマド(イスラムの開祖)とは?
アッラーの啓示を受け取り、人々に伝えた人物(570~632年)。啓示を受け取る人間を「預言者」(神の言葉を預かる者)、それを人々に伝える預言者を「神の使徒」と呼びます。ムハンマドは預言者であり、神の使徒です。
彼は最後の預言者とされ、イスラムでは彼の後に預言者をいっさい認めません。
イスラムのはじまり
西暦610年頃、アラビア半島のマッカ(メッカ)に住んでいた商人ムハンマドが、神の言葉を聞いたことがはじまりです。
当時のマッカの人々は多神教・偶像崇拝を信じていました。ムハンマドはそれを否定し、唯一の神アッラーに従うことを説き、アッラーと何かを並べて崇拝することを厳しく批判しました。
そのためマッカの有力者から厳しく弾圧され、ムハンマド一行はマッカ北部の年マディーナへと逃れます。
マディーナで信徒をふやしたムハンマドは、630年に1万人の兵をひきいて無血のうちにマッカを征服。多神教の神殿だったカアバをイスラムの神殿とし、中に安置されていた偶像をすべて破壊しました。
これをきっかけにイスラムはアラビア半島全域に広まり、ムハンマドの死後も世界各地に伝わっていきました。
イスラムの教えと信仰
教義の中心
「アッラーのほかに神はなく、ムハンマドはアッラーの使徒である」が信仰の核心です。この2つを認める者がすべてムスリムで、2つを認める行為を「信仰告白(シャハーダ)」といいます。
・『アッラーのほかに神はなく』=唯一神アッラーだけを信仰すること。多神教は重大な罪です。
・『ムハンマドはアッラーの使徒である』=預言者ムハンマドは神様の言葉を伝えた人だから、その言動は神の意思にかなっており、信頼されるべきだということ。(ムハンマドの言行は「ハディース」という書物にまとめられています。)
信じるべきもの(六信)
ムスリムは次の6つを信じるべきとされています。
アッラー、使徒、諸預言者、諸啓典、終末の日(および来世)、定命(すべての運命はアッラーによってあらかじめ定められていること)
行うべきこと(五行)
次の5つの行いが信者の義務です。
信仰告白、礼拝、ザカート(定められた喜捨)、ラマダン月の断食、巡礼
イスラムの教えとは?
イスラムの教えには、「唯一神の信仰」「両親への孝行」「子供を殺すことの禁止」「性的品行」「殺人の禁止」「孤児の保護」「売買における軽量の適正」「発言の公正」「神との契約の履行」「直き道(イスラム)に従うこと」などがあります。(コーラン6:151~153)
つまりそれらは、貧しい人のために財産を施し、約束を守り、親や親族や周囲の人々に良い態度をとり、男女間で悪いことしないなどで、日本の倫理観にも通じるものがあります。
(*イスラムの教えとは?信じ・行うことで幸せになれる道徳的価値観)
イスラムと他宗教との比較
唯一神信仰
唯一神の信仰という点では、ユダヤ教、キリスト教の一神教と同じで、ヒンドウー教や神道のような多神教とは異なります。さらに同じ一神教でも、イスラムは神の超越性・唯一性が徹底しており、キリスト教にいう神の子などは認めません。預言者は選ばれた人だが、あくまで普通の人間です。
開祖
開祖が明確な点は、キリスト教、仏教と同じです。ヒンドゥー教やユダヤ教、神道のような長い歴史の中で形成された宗教と異なります。
世界宗教
世界宗教という点ではキリスト教、仏教と共通性を持ちます。特定の民族の宗教であるヒンドゥー教、ユダヤ教とは異なります。
律法
教えを法(シャリーア)として制度化している点は、ユダヤ教と似ています。
イスラムはどんな宗教?
厳格な一神教
ユダヤ教、キリスト教とともに、「唯一神がすべてのものをお創りになった」と信じる一神教です。信じる神は3つとも同じです。エジプトのコプト教徒も、彼らの神をアッラーと呼びます。
最初にできたのがユダヤ教、次がキリスト教、次がイスラムです。イスラムは一神教が徹底しており、コーランの中でしばしば多神教を厳しく非難しています。
契約を重視
イスラムでは契約を重視します。これは預言者ムハンマドが、当時の国際的な商業都市マッカの商人だったことと関係があると言われています。
信仰は神アッラーと信徒の「契約」と見なします。信徒にとっては「現世でアッラーとの契約を守りますから、来世では天国に入れてください」というわけです。具体的な契約内容はコーランやハディースに記されています。信者の基本的な義務は六信五行を守ることです。
生活宗教
宗教的なことに加え、社会的規範、道徳、思考様式、発想なども含むのがイスラムの大きな特色です。つまり生活全体を包括するもので、私たちが考える「宗教」とは全く異なるものです。
信者は六信五行など宗教で定められた生活ルールを実践することで天国へ、そうでなければ地獄へ行くことになります。
柔軟で寛容な教え
ルールを守らなければ即地獄行きかというと、そうではありません。悪いことを上回る良い行いをすれば天国へ行けることになっています。
またルールには除外規定も少なくありません。たとえばラマダン月の断食は、高齢者、10歳以下の子供、病人、妊婦、授乳中の母親、兵士、旅行者は免除されています。豚肉は禁じられていますが、他に食べるものがなく、食べないと餓死してしまうような場合には、食べることが許されます。
イスラムはかなり柔軟な教えなのです。
(*イスラムのルールは厳しい?その教えは柔軟で人にやさしく合理的)
平等主義
全ての人は平等であるというのがイスラムの基本理念です。人は人種や民族の違いを超えて平等であり、男女も平等です。人の上下を分けるのは信仰心の度合いだけです。
「人は弱いもの」が根本思想
全能の神アッラーに対し、人間の力はあまりにも小さい。だから弱いもの同士、助け合って生きようというのがイスラムの基本姿勢です。
貧しい人、病人、高齢者などには無条件に手を差し伸べることが信者の義務とされています。
(*「人は弱い」という根本思想と弱者の救済<イスラムの特色>)
禁欲主義を否定
キリスト教が禁欲を推奨し、食や金儲け・性的なものを控えることをよしとするのに対し、イスラムでは禁欲を推奨していません。人間を欲望をもつ存在と認め、食欲、金銭欲、性欲を肯定し、一定の条件のもとで快楽を追求することを奨励しています。
独身主義も奨励しないため、俗世を捨てて人里離れて長期に行う修行・修道院制度も認められていません。
集団主義と個人主義
イスラム教では、信仰はアッラーと個人の契約という考えに立ち、それぞれが神と直接に相対します。ルールを守る度合いも人それぞれで、他人の信仰についてとやかく言ってはならないことになっています。
一方で「信者たちはみな兄弟」という信徒間の愛を説き、ムスリムたちは一つの共同体だという自覚を持っています。
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