パキスタン女性はなぜバイクを運転しないのか?
パキスタンはバイク天国。どこの町に行ってもバイクがあふれています。狭いバザールの中でも、歩行者を押しのけるようにずんずん進むバイクを見ていると、「ハンドルを握ると性格が変わるって本当だなあ」とか「この国では図々しくないと生きていけないのだな」などと思ったりします。
バイクにぶつけられないか気になって、おちおちバザール歩きも楽しめないほどです。地元の人は慣れっこになっているようですが。
運転しているのは全て男性
バイクが路上を占領しているかのようなパキスタンですが、運転しているのはすべてが男性です。女性が運転する姿を私は一度も見たことがありません。ただ女性も車は運転します。(女性タクシー運転手は見たことはありませんが)。
女性がバイクを運転してはいけないという法律があるわけではありません。
現に最近では、バイクに乗る女性もちらほら現れているようで、マスコミにも取り上げられたりしています。
ただしこういう女性はおそらく全体の1%にも満たないでしょう。
なぜ女性はバイクを運転しないのか?
よく宗教を理由に説明されますが、これは違うと思います。それが証拠にヒンドゥー教徒が多数派のインドでも、バイクを運転するのはほとんどが男性。リキシャ(三輪の乗り物)の運転手も男性です。
何人かのパキスタン男性に聞いたことがあります。
ーなぜこの国では女性はバイクを運転しないのですか?
「嫌いだからです」
きまってこういう返事がかえってきます。
ーなぜ嫌いなんですか?
そう聞くと、たいていの人は返答に困り、沈黙してしまいます。イヌが嫌いな人に対して「なぜイヌが嫌いなの?」と聞いているようなものだからです。
そしてしばしの沈黙ののち「うーん、好きじゃないんだ」とやっぱり同じような返事が返ってくるだけです。
女性は「乗せてもらいたい」生き物?
ーバイクを運転している女性を、周囲が悪く言うことはあるんですか?
「そういうことはない、でも女性は運転したがらないんだ」
きっと明確な理由はないのでしょう。あるとしたら、「男性は乗り物を運転したい生き物・女性は乗せてもらいたい生き物」だということ。男女の生理的な違いからきているのでは?
男女の性差はないと考える人もいるでしょう。私は(体力的・生物学的に)男女は違うと考える立場なので、勝手に女性がバイクを運転しない理由をこう考えます。
男性はバイクの運転が好き、女性は乗せてもらう方が好き。
あとは社会的なものもあると思います。
多くの女性がバイクを運転したがらないから、その状態が一般的になり、あえて運転しよういうという女性が現れない。
誰か1人がバイクに乗って、それがかっこいいということになれば、「私も」という女性も現れるかもしれない。
必ず横座り
女性は必ず「横坐り」というのも興味深い現象です。
パキスタン女性の服装は、シャルワール・カミーズという長いシャツとズボンの組み合わせです。ズボンならバイクにまたぐことは容易です。でもまたいで乗っている女性を見たことはありません。
私は何度かバイクの後ろに乗ったことがありますが、必ずまたぎます。横坐りは安定性に欠くようで怖くてできません。
そして振り落とされないよう、後輪の両脇に乗せた足に力を入れてふんばり、運転手の肩を両手でガシッとつかむ。とても人様に見せられる格好ではありません。
横坐りはそれに比べて女性的でエレガントだということは認めます。「またぐ」という行為はそれに比べ、なんとなく「粗野」で「はしたない」と感じるのは私だけでしょうか。
ともかくパキスタン(やインドなどの南アジア)の人たちは、男女の性差に素直に従って、無理せず生きているような気がします。